昨日から、個人の確定申告についての「振替納税の案内」がe-Taxで配信され始めているようです。今年に入ってからのe-Taxのセキュリティ変更により、この案内を見ることができない人が多いのでは?という疑問が湧きましたので、整理しておきたいと思います。

「振替納税のお知らせ」とは

最初に「振替納税の案内」について簡単に触れておきます。

個人の方が銀行口座からの口座振替で税金(所得税・消費税)を納める方法を振替納税といい、今年であれば所得税は4月22日(月)、消費税は4月24日(水)がその振替日にあたります。

(振替納税の詳細について知りたい方は、国税庁ホームページの
[手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付
をご覧ください。)

そして振替前に、e-Taxのメッセージボックスに配信される「この金額を何日に口座振替しますよ」という連絡を「振替納税のお知らせ」(正式には、「国税に係る振替納税のお知らせ」)といいます。

昨日あたりから、「e-Taxのメッセージボックスにこの案内を掲載しましたよ」というメールが届き始めたのですが、いざ確認しようとしたところ、

  • 納税者のメッセージボックスではマイナンバーカードがないとみることができない
  • 委任関係を設定した税理士のメッセージボックスにも配信されていない

ということで、納税者の方がマイナンバーカードを持っていないと、誰も閲覧できない状態になっているのでは?と思った次第です。

e-Taxのセキュリティ強化に伴う変更点を再確認

今年1月のe-Taxのセキュリティ強化についての発表資料から判断すると、マイナンバーカードがないと「振替納税のお知らせ」を閲覧できないというのは、当然の結果ということになります。

どういうことかといいますと、マイナンバーカードを持たない納税者が、e-Taxのメッセージボックスで閲覧できるのは、下記の3つの手続きのみとなっています。

  • 所得税徴収高計算書の提出
  • 納付情報登録依頼
  • 納税証明書の交付請求(税務署窓口での交付分)

ここには「振替納税のお知らせ」に関する手続きは含まれていません。

また、委任関係を結んだ税理士のメッセージボックスに、必要な情報を転送するという手続きが、今年から始まりましたが、この手続きにより転送されるのは「申告のお知らせ」だけであり、その他のメッセージは転送される仕様になっていません。

その結果「振替納税のお知らせ」も転送されない、ということになっているようです。

これと同様の課題については、以前まとめてありますので、ご興味のある方はご覧ください。

今回の件については、上記の理解で間違いがないか、e-Taxのホームページよりメールで問い合わせているところです。新しい情報がありましたら、この記事に追記する予定です。

システムの導入・変更には事前の検討が大事

今回の件については、振替納税の対象となるお客さまには、申告書の控えとともに、「申告のお知らせ」に記載された振替日にマーカーを引いてお渡ししていますので、大きな問題にはならないと思っています。

ただ、もし本当にマイナンバーカードを持っていないと、誰も見ることができないようなメッセージであるとするならば、そもそも配信する意味があるのか?という気がします。

政府としてはマイナンバーカードを普及させたい意向があるでしょうし、マイナンバーカードで情報を一元化すること自体は個人的には賛成です。

しかしながら、今回のe-Taxのセキュリティ強化はあまりにも事前の検討が不十分で、対応の抜け漏れが多いと感じます。
( e-Taxでの配信予定のメッセージはわかっているはずですから、事前に一つ一つ検証していれば、このようなことは起こらないはず。)

一方でこうした事象から、企業でシステム導入(クラウド会計へと切替するようなケースも含めて)の際に、注意すべきことを学ぶことができます。

それは、新しいシステムの導入やシステムを変更する場合には、事前の検討が非常に重要となる、という点です。

もちろんどれだけ詳細に事前検討しても、いざ運用を開始すると、想定していなかったトラブルは避けられませんが、事前の検討をきちんと行うことにより、実運用でのトラブルを減らすことはできます。

「とりあえず入れてみて、何かあったらそのとき考えよう」というのは規模の小さい企業であればなんとかなるケースもありますが、規模が大きくなるにつれ、お客様・ユーザーなど他の方に迷惑をかける可能性が高くなり、トラブル対応やフォローにムダな時間や労力を使うことになりかねません。

そのため今回の事例も、他山の石として活かしていくべきでしょう。

【2019年4月12日追記】問い合わせへの回答他について

本日(4月12日)、e-Taxホームページより問い合わせに対する回答を受け取りました。回答内容は以下の通りです。そのまま掲載します。

当該メッセージについては、平成31年4月からメッセージボックスセキュリテイ強化の対象となっており、マイナンバーカード等がないと閲覧することはできません。
 委任関係の登録によるメッセージの転送設定の対象は、個人納税者に係る「申告のお知らせ」のみであり、「振替納税のお知らせ」は、メッセージの転送は行われません。
 当該対応については、セキュリティ対策の観点から行っていることをご理解ください。

 なお、納税者ご本人から税務署にお問合せいただければ本人確認の後、振替金融機関をお伝えすることが可能です。

また本日e-Taxのホームページに、下記お知らせが追加されていました。

振替納税のお知らせについて(平成31年4月12日)

このお知らせの中でも注書きとして、以下の記載があります。

※2 個人納税者に係るe-Taxのメッセージボックスの閲覧については、セキュリティ対策の観点から、平成31年1月以降、原則としてマイナンバーカード等の電子証明書が必要になりました。平成30年12月以前に格納されているメッセージの閲覧についても電子証明書が必要となります。
  また、振替納税のお知らせについては、税理士との委任関係を登録することで、納税者本人のメッセージボックスに格納される「申告のお知らせ」を納税者が委任する税理士のメッセージボックスに転送する機能に対応しておりませんので、ご注意願います。

e-Taxホームページ「振替納税のお知らせについて(平成31年4月12日)」より

というわけで、予想通りマイナンバーカードがないと、閲覧できないとのことでした。今後の改善に期待したいと思います・・・。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。