前回の記事において、所得税と住民税で上場株式配当の申告方式を変更できるということについて書きました。

上場株式配当の申告方法を所得税と住民税で変更する方法 – 加藤羨一税理士事務所

今回はその続きとして、京都市のサイトで平成30年用の住民税申告書を作成する手順についてまとめます。

この記事では、所得税の確定申告書で配当所得を含めて申告した方が、住民税の申告書で配当所得の申告不要を選択するケースを想定して解説します。

住民税申告書の作成手順

京都市の個人住民税申告書作成ページを開く

京都市の個人市・府民税のページ内にある、「こちらで市・府民税の税額の試算と申告書の作成ができます。」というリンクをクリックします。

ページ内に記載された内容を確認してから「同意する」をクリックします。

申告書作成に必要なデータを入力する

入力画面の選択

年度の選択が「平成30年度(平成29年中収入)」となっていることを確認した上で、収入の内容に応じて該当するボタンを押します。

所得税の確定申告書で、給与と配当だけを申告した方は、配当所得を申告不要として作成しますので下記画面の「給与収入のみの方」を選択してください。

これ以降の画面は、「複数の収入がある方」を選択した場合の画面となります。

必要事項の入力

給与所得や公的年金等の源泉徴収票をお持ちの方は、下記画面の「給与所得の源泉徴収票」や「公的年金等の源泉徴収票」のボタンを押して源泉徴収票の内容を入力してください。

それ以外の項目については、作成済みの所得税申告書を手元に準備した上で、

  • 給与や年金以外の所得がある方は、所得の区分に応じて上記画面の「所得金額」欄の「詳細入力」ボタンを押して必要事項を入力(分離課税の所得金額がある方は、画面を下にスクロールすると入力画面がありますので、そこに入力してください)
  • 「所得から差し引かれる金額」については、下記画面の「詳細入力」を押して必要事項を入力(所得税申告書第一表にも同じ名称の欄がありますので、そこを参照してください。なお、控除される金額は所得税とは異なります。)
  • 寄附金(ふるさと納税など)や住宅ローン控除の適用を受けている方は、下記画面の「寄附金に関する事項」欄や「住宅借入金等特別税額控除額に関する事項」欄に適宜必要事項を入力してください。基本的な入力項目は所得税の申告書と同じです。

なお、今回は配当所得を申告不要としますので、「所得金額」欄の「配当」もしくは「分離課税」欄の「上場株式等の配当等」及び「配当割額控除額」という欄には数字を入力しないでください。

個人型確定拠出年金などに加入されている方への注意事項

給与収入がある方で、年末調整にて小規模企業共済等掛金控除(個人型確定拠出年金、いわゆるiDecoなど)の適用を受けた方は注意が必要です。

年末調整で個人型確定拠出年金などの控除を受けている場合には、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄が2段書で表示されます。

上段のかっこ書が個人型確定拠出年金などの金額となり、下段の数字はこのかっこ書を含めた金額になっています。

これらの数字は申告書を作成する際、上段は「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、下段から上段を引いた数字が「社会保険料控除」の対象となります。

国税庁の確定申告書作成コーナーでは上図のように、この2つの数字を別々に入力することができる仕様になっていて、「社会保険料控除」と「小規模企業共済掛金控除」が正しく計算されるのですが、京都市のサイトでは給与の源泉徴収票から入力する場合、下図のように社会保険料控除欄にかっこ書の金額を入力できません。

ここで入力した金額がそのまま「社会保険料控除」の欄に表示されてるため、「所得から差し引かれる金額」の「小規模企業共済等掛金控除」の欄にかっこ書の金額を入力してしまうと、小規模企業共済掛金控除の金額がダブってしまい、税額が正しく計算されません。

これを避けるには、給与の源泉徴収票から入力される場合には、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄には、上段のかっこ書の金額を引いた後の数字を入力する必要があります。

具体的には、仮に社会保険料等の金額が合計で90万円、上段のかっこ書(個人型確定拠出年金などに支払った金額)が40万円とすると、源泉徴収票の入力時には、90万円-40万円=50万円を「社会保険料等の金額」欄に入力して、そのあとで「所得から差し引かれる金額」の中の「小規模企業共済等掛金控除」欄に40万円と入力する必要があります。

税額試算結果を表示して、申告書を作成する

必要事項を入力した後、画面下の方にある「税額計算」ボタンを押すと、下記画面が表示されて住民税の税額を確認することができます(下記画面の税額欄は塗りつぶしています)。

この後、「申告書作成」を押すとPDFファイルが作成されます。

作成されたPDFファイルを開くと、住所や氏名の欄は画面上で入力が可能となっていますので、必要事項を入力した上で印刷すれば、住民税の申告書が完成します。

ただし雑所得がある方などは、裏面も記入が必要となっていて、ここは手書きでの記入が必要です。

申告書の提出にあたり京都市に電話で確認したところ、所得税申告済みであれば源泉徴収票などの添付資料は添付不要とのこと。ただし、「配当所得の申告不要を選択するための申告である旨」を申告書の欄外に記載しておいて欲しいとの説明がありました。

ただ実際に区役所に提出に行った時には、「何この申告書?」という感じでした。受付する側もまだ慣れていない方が多いのかもしれません。

さて、ここまで住民税申告書作成手順の概略を説明しましたが、やはり大変といえば大変です。

住民税において配当所得の申告不要を選択をされる方がどれだけいるかわかりませんが、できれば申告書ではなくて、「配当所得申告不要選択連絡票」みたいな書類を1枚提出するだけ、という風にしてもらえると助かるのですが・・・。

なお、上記内容には細心の注意を払っておりますが、作成される方の状況により上記の方法では正しい申告書が作成されない可能性もあります。その点ご了承の上で本記事をご活用ください。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。