現在、確定申告の真っ只中ですが、毎年申告をされる方に税務署から送付されてくる所得税の確定申告書の用紙(プレプリント申告書)についてちょっと考えてみたいと思います。
1.「申告書の用紙が届かないんですが・・・」
今年から所得税の申告書にマイナンバーを記載しなければなりませんが、紙で提出するとなると
・お客様の通知カードのコピー
・税務代理権限証書(税理士に対する委任状のようなものです)
・税理士証票のコピー
の3点セットを申告書に添付しなければならないため、非常にメンドクサイです。
そのため、昨年からすべてのお客様に電子申告への切替をお願いしています。
電子申告へと切替していく中で、お客様からいただく声の一つとして「税務署からの申告書用紙がいつまで待ってもこないのですが・・・」というのがあります。
毎年納税がある方であれば、(振替納税をしていなければ)納付書だけは送付されて来るのですが、還付申告の方についてはプレプリント申告書や納付書が税務署から送付されてこないためです。
その代わりに、E-taxのメッセージボックスに「所得税等、消費税及び贈与税の申告について」という案内が届きますので、「じゃあそのメッセージを確認すれば問題なし」と言いたいところなのですが、なかなかそううまくはいきません。
電子申告を開始する際に提出する開始届にメールアドレスを記載する欄がありますが、お客様によっては「メールなんか使ってないよ」等々のお言葉をいただき、とはいえE-taxからの連絡を全く見ないわけにもいきませんので、とりあえず税理士事務所のアドレスだけ登録するというケースもあります。
そうなると、E-taxからの申告の案内は税理士しかみないこととなり、そうしたお客様にとっては「申告書がいつまでも来ない!」という事になってしまうわけです。
ちなみに税務署の方のお話しでは、平成29年分の申告からは税理士関与のお客様については、紙の申告書を提出している場合でもプレプリント申告書の送付が廃止されるそうです。
2.E-taxからの連絡方法(メッセージボックス)には改善の余地あり
では、普段メールを使わないお客様に対しては、どうやって申告案内を伝えるか?
解決策になってないですが、やはりE-taxにメールアドレス登録してもらって、メッセージボックスを見てもらうのが一番いいんですよね。
ただ、仮に普段からメールを使っていたとしても、E-taxのメッセージボックスをきちんと見てもらえるという保証はありません。
一番の問題は、メール本文を見ても何の連絡かさっぱり分からないこと。
もちろんメールタイトルには「申告に関するお知らせ」とか「振替納税のお知らせ」といったタイトルは入っているのですが、Web上のメッセージボックスを見に行かないと具体的な内容は分かりませんし、しかもメッセージボックスを見るには毎回16桁の利用者識別番号とE-tax用のパスワードを入力しなければなりません。
そんなの覚えている人や手元に控えている人はほとんどいないと思いますので、メールからリンクをクリックしてもログイン画面を見て「メンドクサイからいいや」と思う方がほとんどだと思います。
E-taxのメッセージボックスには、青色申告かどうか、中間申告の納税額がいくらか、消費税の簡易課税を適用しているか、等々個人情報が満載ですから、これくらいのセキュリティは必須といわれればもちろんそうなのですが、せめてメール本文を見れば大まかな内容がわかるようにしてもらえないかと思います。
そうしないと税理士以外の一般の方に見てもらうのは厳しいのではないかと・・・。
そもそも「税理士さんが見てるだろうし、何かあったら連絡くれるだろう」と思ってらっしゃるお客様が多いと思いますので、E-taxからメールで連絡がきても内容を気にする方は少ないのでしょう、きっと。
3.世の中の仕組みが変わるには時間がかかる
先日縁あってとあるセミナーに参加させてもらったのですが、その中で興味深かったのは「産業革命のような大きなイノベーションの効果が社会全体に及ぶには、社会全体の仕組みがその技術を活かすものに根本的に作り替えられる必要があるため非常に長い時間がかかる」というお話しでした。
IT革命(最近はICTと言われることが増えましたが)という言葉がもてはやされてからかなりの年月が経ちましたが、税金の世界だけを見ても情報通信の技術革新による効果が世の中に浸透するにはもう1世代くらい待たないといけないのかもしれません。
このプレプリント申告書送付廃止の流れというのも、ITによる技術革新の効果が社会に浸透する過程における軋轢みたいなものと考えています。
そうした軋轢を少しでも和らげるために、かつ税理士側の仕事を増やさないようにしつつ、税理士として何ができるか考えていく必要があります。
なお、個人的にはプレプリント申告書の送付を削減することには賛成です。あの用紙使われている割合は一体どれくらいでしょうか?ほとんどゴミ箱に直行しているのではないかと思います。エコおよびコスト削減の観点から賛成です。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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