新しいツールを使い始めようとすると、最初の使い始める段階で躓くことがあります。今回はツールを使い始める際に越える必要がある「カベ」について考えてみましょう。

新しいツールを使い始めることの大変さ

昨日RPAツールであるPower Automate Desktop(以下、「PAD」)の勉強会に参加していたのですが、組織の中で導入推進をされている方の発表で
「トレーニングコースを修了してくれる方は増えてきたものの、その後各人が自発的にフローを作ってくれないのが現状の課題」
といったお話がありました。
自分がPADを使い始めたときのこと(といっても数ヶ月前の話ですが)を思い返してみると、
「便利なツールが無償で使えるので、最大限活用しよう」
という思いはあったものの、なかなか作り始められない時期がありました。
RPAツールについては、制約なく低コストで使えるものがないか探していましたので、PADはうってつけのツールだったのですが、それでもなかなか始められませんでした。
その原因を改めて考えてみると、
「作り始めようとすると、そこからの様々な作業が頭に浮かんで、億劫な気持ちになり手がつけられない」
というものだった気がします。

ツールを自分で使い始めるまでに越えるべき2つのカベ

新しいツールを使うことにワクワクする気持ちを抱く一方で、慣れるまでの過程を想像すると、使うことを躊躇してしまう。
すべての人に当てはまるものではないと思いますが、RPAのようにそれなりの工数をかけないと使えないツールであれば、同じように感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こうした場合、ある程度慣れるレベルまで使っていくには、越えないといけないカベが2つあります。
  1. ツールを使って何をするかというアイデアを出すまでのカベ
  2. 出したアイデアを形に落とし込むまでのカベ
それぞれについて、PADを使うケースで考えてみましょう。

アイデアを出すまでのカベ

新しいツールを使おうとする際の最初のカベは、「何に使っていいのかわからない」というものです。
今まで使ったことがないものですから、実際の業務のどの部分に当てはめればいいかというイメージが湧かず、結局使い始めることができないということになってしまいます。
これについては、仕事をしている中で感じる「メンドクサイ」という感覚を大事にしておくべきと考えています。
「メンドクサイ」=積極的にやりたくない仕事
なので、そうした仕事は自動化にはうってつけです。
最初は、例えば「毎日使うシステムへのログインの自動化」といった小さなことでも構いません。
アイデアを出すという行動を続けているうちに、だんだんとアイデア出しに慣れてきます。
慣れてくれば、普段から「自動化できる業務はないか」という視点で自分の仕事を見ることができるようになり、アイデアは出やすくなるものです。

アイデアを形(フロー)に落とし込むまでのカベ

PADなどの新しいツールを使い始める前に、学習教材などを使って学ぶことも多いと思います。
学習教材などを使って学んでいるうちは、楽しみながらできたとしても、いざ自分でつくろうとすると、
  • フローを作るのにはある程度まとまった時間が必要なので、作り始める気が起きない(もしくは作り始められない)

  • 作り始めてみたもののわからないことだらけで、調べているうちにイヤになり途中でやめてしまう

  • 自動化したい業務をどのような考え方でフローに落とし込めばいいのか想像がつかず、「RPAはカンタンじゃない」と感じて使うのをやめてしまう

といった状況に陥り、結局使えずに終わってしまうこともありえます。
学習教材などであれば、指示されたとおりに作ればきちんと動いてくれます。
つまり、答え・ゴールがはっきりしているので、達成感も得やすく続けやすいわけです。
一方、実際の業務を自動化するとなると、やり方はひとつではありません。
状況に応じて、やるべきこと・できることは変わってきますので、常に自分のアタマで考える必要があります。
本来業務を持った中でこうしたことをやろうとすると、どうしても後回しになってしまいやすいものです。

カベを越えるためのヒント

特に2番目のカベを越えるためにはどうすればいいか?やはり慣れるまで続ける必要があります。

自分の中の「引出」というか、ある程度の「型」を身につけると、その「型」を応用して処理できるようになるので、ツールを使うことが一気にラクになります。

Excelを使い始めたころでも、

  • 連続したデータ入力をするのにオートフィルを使う
  • 必要なデータだけ抜き出すのにオートフィルターを使う
  • クロス集計するのにピボットテーブルを使う

といった「型」をひとつずつ身につけていくことで、作業が早くなっていった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

PADなどのツールであっても状況は同じです。

では「型」を身につけるまで続けるにはどうすべきか?

「どうしても解決したい課題があって、そのためのツールとしてPADが最適」という状況であれば、モチベーションを維持しやすく、課題を解決する中でカベを越えられる可能性は高くなります。

一方で、大きな組織などの場合、組織の方針として「生産性向上のためのツールとして、○○を採用する」というケースもあるものです。

こうしたケースでは、「どうしても解決したいというモチベーション」や「なんとか時間を捻出してでもやらざるを得ない状況」がないケースも多く、活用がすすまないことが多いかもしれません。

この場合は、例えば経営者に対して定期的に部門ごとの改善報告を行ってもらうなど、トップダウンで強制的にやらざるを得ない状況を作り出すことが必要ではないかと。

使わざるを得ない状況を作る → 使う中で自分でもできるんだという成功体験を持ってもらう

という流れができれば、活用が進む可能性が高くなります。


ツールは上手に使えば生産性向上につながりますが、使い始めるまでが大変なものです。

そして最初の段階で、ちょっとした工夫や配慮をすることにより状況が変わることもあります。

せっかくですから、そんな「ちょっとした工夫」考えてみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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