キャッシュレス化が少しずつ進んでいるとはいえ、仕事上現金を管理しないといけないケースはまだまだあります。「現金残高って毎日確認しないといけないの?」という疑問を切り口として、業務の見直し方について考えてみたいと思います。

「現金って毎日数えないといけないんですか?」という質問への回答

以前と比べると聞かれることは少なくなった気がしますが、それでもたまに

「現金って毎日数えないといけないんですか?」

という質問を受けることはあります。

どのように答えるべきか色々考えてきましたが、今のところは以下の2点を理由としています。

  1. 毎日数えないと後で合わせるのが大変
  2. 内部で不正が起きないようにするため

取り扱っている現金の量にもよりますが、現金が合わない理由は本当に様々です。

現金の単純な数え間違い、集計表の作成ミス、仮出金の処理漏れ等々。

合わない原因として、いろんな要素が積み重なれば積み重なるほど、それを紐解くのは大変になります。

「毎日少しずつやる方が、後でまとめてやるよりも結局は時間がかからずに済む」という点が一つ目の理由です。

現金を数えてどうしても残高があわない場合、「現金過不足」等の科目で最終的に処理することになりますが、組織で働く人が増えてくると、その原因として「不正」という点も否定できなくなってきます。

もちろん「現金過不足=不正」というわけではありませんが、もし組織内部で不正が起きているとわかった場合、正直気持ちのよいものではありません。

会社に勤めていたころ当時の上司に、

『会社の仕組みは、変な気を起こしそうになっている人に、
「ここまでチェックされてたら、すぐにバレるから不正をしてもムダ」
と思いとどまらせるようなものでないといけない』

と教えられたことがありました。

現金実査だけで不正をすべて防止できるわけではありませんが、「毎日きちんと現金を合わせている」という姿勢を周りに示すことで、「お金を抜いたりしてもすぐにバレる」というメッセージを送ることができます。

また内部不正以外にも、盗難の被害にあった場合に、すぐに気付くことができるという効果もあります。

現金というのは不正が起きやすいところですし、不正が起きて幸せになるひとはひとりもいません。

だからこそ、「不正を起こさせない・盗難などの被害を早急に見つける」可能性を高めるといったことも、毎日現金を数える理由のひとつだと考えています。

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環境によって変わる仕事の必要性

「現金を毎日数える必要がある理由」について、私なりの回答をまとめましたが、ではこれがすべての人に当てはまるかどうか。

一つの目の理由である「毎日数えた方が、トータルとしての時間が節約できる」という点。

そもそもほとんど現金を扱わない商売であれば、毎日数える方が効率が悪く余計に時間がかかる可能性もあります。

普段はキャッシュレスで対応していて、どうしても現金決済したいという方の為に、念のため少額の釣り銭を準備しているようなケースなどであれば、わざわざ毎日確認する必要はないかもしれません。

二つ目の理由である、「不正を起こさないため」という点。

ひとり社長の法人やひとりでやっている個人事業主の方の場合、現金を扱うのは自分ひとりなわけですから、盗難等の対策がきちんとできていれば、そこまで厳密に当てはめる必要もありません。

さらに、組織であっても扱っている現金が少なければ、不正を起こすメリットもほとんどないでしょうし、盗難などのリスクも低くなりますので、そこまで心配する必要はなくなります。


このように「現金を毎日数える」という仕事ひとつとっても、基本となる考え方はあれど、それがすべてのケースに当てはまるとは考えていません。

それぞれの仕事の環境に応じて「必要があって」やるのが仕事ですから、必要がないのであれば毎日数える必要はないわけです(毎日はやらなくてもいいかもしれませんが、一切数えなくていいというわけではありません、念のため)。

「現金は毎日数えるべきもの」と教えられたという理由だけで続けているのであれば、本当に必要かどうか見直すべきでしょう。

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それでも現金管理は高コストな仕事

とはいえ、「現金を扱う」という仕事は、残高をチェックするなどの業務を含めてコスト高であることに変わりはありません。

数える業務を効率化するために、小銭の枚数が一目でわかるコインケースを使ったり、現金を自動的に数えてくれる機械を導入したりといった改善は、いろんな会社でされてきたはずです。

しかしそれはあくまで、「数える」作業を効率化するためのもの。

手元で取り扱う現金がなくなれば、こうした数える・確認するといった作業をすべて無くすことができます。

「そんなこといっても、小売業で現金無くすなんてムリ」といった意見も当然出てくるかと思いますが、そうしたケースにおいてキャッシュレスの支払手段をきちんと充実・提示できているかどうか。

お客さんはキャッシュレスで支払いたいのに、仕方なく現金で支払っている可能性はありませんでしょうか?

キャッシュレス決済も運営コストがゼロではありませんので、よく検討した上で導入する必要がありますが、その一方で現金を管理する仕事にも人件費というコストはかかっています。

目的はあくまでローコストでオペレーションを回して、利益を増やすことのはず。

そのためにも取り扱う現金を減らすことは、メリットのあることだと考えます。

「そんなカンタンに減らせないよ」という業種であっても、本当にできることがないか一度検討されてみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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