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税金にまつわる仕事をしていると、国税と地方税の窓口が別であることにストレスを感じるケースがあります。今回は、窓口が分かれていることから生じるロスについて考えてみましょう。

電子納税といっても手順が異なるe-TaxとeLTAX

銀行窓口に行かなくても税金の支払いができる電子納税。

非常に便利な仕組みですが、法人でダイレクト納付という仕組みを使って支払う場合、国に納める国税(法人税など)と地方自治体に納める地方税(法人事業税や法人住民税)でそれぞれ別の仕組みを使って処理をしなければなりません。

それぞれe-Tax(国税)とeLTAX(地方税)というこれらのシステム、別々に処理する必要があるだけならまだしも、支払いまでの手順が微妙に異なっています。

e-Taxの場合、

申告書の電子送信
→ メッセージボックスで「納付情報登録依頼」というメッセージを開く
→ 「ダイレクト納付」欄のボタンを押して(日付指定の場合は日付を入力して)完了

という流れです。

一方、eLTAXの場合は、

申告書の電子送信
→ 送信した申告データを呼び出して、必要情報を入力して「納付情報登録依頼」を行う
→ 別メニューに移動して、先ほど依頼した「納付情報」を検索して探す
→ 内容確認しながら画面を進めていく 
→ 「ダイレクト方式」欄のボタンを押して(日付指定の場合は日付を入力して)完了

という流れになっています。

文字にするとなかなか伝わりにくいかもしれませんが、e-Taxでは申告書を送信すれば自動的に作成されていた「納付情報」というデータを、eLTAXでは別途自分で作成する必要があります。

「税金の支払い」という点では何ら違いがないのに、片方の仕組みでは省略されている手順を、もう片方の仕組みではわざわざ作らないといけない。

システムが別々に作られているので、それぞれ言い分はあると思いますが、使う側からすれば、メンドウなだけで何もメリットがありません。

償却資産税を決算に合わせて申告できないのは市町村の事務負担が原因?

土地・建物以外の固定資産税にかかる「償却資産税」という税金があります。

これは各市町村が税金を徴収するのですが、申告書の提出期限は毎年1月31日となっています。

決算日時点の固定資産に対して償却資産税がかかるのであれば、決算時の固定資産台帳をもとに申告すればよいのですが、償却資産税は1月1日時点の固定資産に対してかかるため、12月決算以外の法人は、この申告に合わせて固定資産の処理を終わらせなければなりません。

そのため、以前から経済団体や税理士会より、

「法人の決算日時点の固定資産に対して償却資産税を申告するよう変更して欲しい」

といった要望が出されていますが、今のところ変りそうな気配はありません。

対応できない理由として、「課税漏れなどの問題が生じる可能性がある」等挙げられていますが、要するに市町村として変更後の状況に対応できるだけの人員がいないということでしょう。

償却資産税については、窓口が市町村となっていることから、調査についても市町村が行うこととなっていますが、税務署が行う税務調査と比較すると、調査が行われることは少なくなっています。

そもそも、なぜ地方税については市町村(もしくは都道府県)が対応することになっているかといえば、恐らく

「自分たちの収入なんだから、自分たちできちんと集めなさい」

という考え方によるものなのでしょう。

「自分の収入は自分で稼ぐ」という考え方自体は間違っているとは思いませんが、そのことにより多くの人に余計な手間をかけていたとしても、本当に今後もその考え方で推し進めるべきかどうか…。

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分けていることで効率が下がるなら、まとめてしまえばいいのでは?

私は割り切って考える方なので、こうした状況を見ていると、

「税金を徴収する窓口は税務署に一本化してしまえばいいのでは?」

と思ったりするわけです。

(もちろん必要な人員は市町村から税務署に移ってもらう前提で、ですが)

現場の方からは異論が噴出するかもしれませんが、税金の窓口が一本化されるとどうなるか想像力を働かせてみると…

  • 電子申告のシステムがe-Taxに一本化される
  • 税金ごとにあちこちの窓口に行かなくていい(ワンストップサービス)
  • 償却資産税も決算に合わせての申告に変更できる(かも)

といったことが実現する可能性が出てくるわけです。

税金を支払う(手続きをする)側からすれば、現在生じているいろんなロスが解消されることになります。

その一方で窓口を一本化してしまうと、

  • 実務の増加により現場が回らなくなる
  • 業務増加によるモチベーションの低下
  • 自治体独自の課税がやりづらくなり、地方自治が後退する

といった問題が生じるかもしれません。

ただ、現在の仕組みは、人口が増加する時代の「仕事が回らないなら、人を増やせばいい」という考え方に支えられています。

これから人口増加が見込めないのであれば、「仕事を集約して効率化する」「ITを活用して効率化する」といった対応は避けて通れません。

ITの活用はまったく進んでいないとはいいませんが、そこまで急速に進んでいないのも事実。

世の中の効率を上げるためにも、「分散しているものをまとめる」という視点も必要なんじゃないかと。

少し私の妄想が行き過ぎたかもしれませんが、「eLTAXの電子納税使いにくいな…」と感じつつ、考えたことをまとめてみました。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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