ビジネスの潮目が変わり、状況が急激に変わる場面では期待と不安が入り混じるものです。流れに飲まれて足元を見失わないためには、あえて「外部の力」を頼る勇気が欠かせないのではないでしょうか。
売上が急激に増えると起きうるリスク
みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。
経営をしていれば、誰もが「売上を伸ばしたい」と願うものです。
しかし、その願いが予想を上回るスピードで実現してしまったとき、そこには大きなリスクが潜んでいます。
状況が急激に変化する渦中にいるとき、当事者は目の前の対応に追われ、本来気づくべき危険信号を見落としてしまいがちだからです。
例えば、個人事業主の方のケースを考えてみましょう。
これまで年商数百万円規模で商売をされてきた方が、市場環境の変化等により、突如として年商が1,000万円を大きく超えるような事態。
これは喜ばしい悲鳴のはずですが、税務の側面では「見えない地雷」が埋め込まれた状態でもあります。
よくあるのが、消費税に関する誤解です。
「自分はインボイス登録をしていないから、消費税は関係ない」と思い込み、そのまま放置してしまう。
ところが、売上が1,000万円を超えれば、その2年後には消費税の納税義務が発生します。
最悪のシナリオは、数年経ってから税務署から「お尋ね(通知)」が届くケースです。その時になって初めて納税義務を知っても、時すでに遅し。
消費税の計算負担を軽くできる「簡易課税制度」の選択届出書は期限が過ぎていて出せません。
かといって、日々の取引でインボイス(適格請求書)を正しく保存する習慣もなかったため、原則課税での仕入税額控除もままならない。結果として、想定外の多額の納税に頭を抱えることになります。
これは単なる知識不足というだけではなく、「変化のスピードに対応が追いつかなかった」ことで起きる悲劇といえます。
その変化、事前に想定していたものですか?
こうした現象は、決して個人事業主に限った話ではありません。法人であっても、急激な成長の裏側には常に歪みが生じます。
例えば、自社開発のヒット商品が爆発的に売れ、売上が前期の数倍に膨れ上がるようなケース。
現場の人手が足りなくなるのは火を見るより明らかですが、経営者が陥りやすい意外な罠が資金繰りの悪化です。
「売上が増えているのに、なぜか手元にお金が足りない」
そんな感覚に陥ったことはないでしょうか。売上が増えれば、仕入も増え、外注費も膨らみます。
代金の回収よりも先に支払いがやってくるビジネスモデルであれば、成長すればするほどキャッシュは枯渇していきます。このメカニズムを感覚だけで乗り切ろうとするのは、非常に危険です。
ここで重要なのは、その変化が「事前に想定していたものかどうか」という点です。
あらかじめ事業計画を立て、人員の採用計画や銀行融資の枠を確保し、目標通りに成長したのであれば、それは素晴らしい経営の成果です。コントロール下にある変化は、リスクではありません。
問題は、全く想定していなかったタイミングで、濁流のように状況が変わってしまったときです。
人間はどうしても、急な変化に対して「自分たちだけでなんとかしよう」と抱え込んでしまいがちです。
しかし、先ほどの個人事業主の例のように「そもそも知らないルール」があるリスクや、売上増が資金繰りに与えるインパクトを読み違えるリスクは、自社内だけではなかなか客観視できません。
こうしたときこそ、外部のサポートを頼るべきではないでしょうか。
何も一生涯、伴走し続けてもらう必要はありません。状況が落ち着き、新しい巡航速度に慣れるまでの期間限定でも十分です。
「今はAIに聞けば何でも教えてくれる」という意見もあるでしょう。
確かに便利ですが、AIはあなたの事業の特殊事情まで汲み取った上で、間違った際に責任を取ってくれるわけではありませんし、提示された内容が正しいかどうか判断がつかないこともあります。
余裕がないときほど立ち止まって考えるべき
急激な変化の中にいるとき、多くのケースでそもそも第三者の力を借りようという思考にならないほど「余裕」を失っています。
朝から晩まで対応に追われ、現場のトラブルをフォローし、気づけば深夜に帳簿を開く。そんな状態では、人間はどうしても近視眼的になります。
「外部に相談する時間があるなら、一件でも多く注文を捌きたい」
「コンサルや税理士に説明する手間が惜しい」
そう思ってしまう気持ちは痛いほどよく分かります。
しかし、余裕がないときほど、一度立ち止まって「いま、自分が見落としているリスクはないか?」と第三者に問いかける時間を作るべきです。
第三者は、あなたが見ている景色とは違う角度から事業を眺めています。
「このままのペースで売上が増えると、来月の支払いがショートしませんか?」
「今のうちにこの届出を出しておかないと、数年後に数百万円損をしますよ」
こうしたアドバイスは、数カ月後、数年後のご自身の状況を大きく変えるものになる可能性があります。
もし今、あなたが予想もしない急成長や環境の変化に戸惑っているのなら、まずは信頼できる専門家に声をかけてみてください。その一歩が、数年後のあなたを救うことになるはずです。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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