経理作業で「これ、前も入力したかな?」と手が止まる時間は非常にもったいないものです。自分なりの明確なルールを持つことが、ミスを防ぎ、本業に集中するための最短ルートになります。
経理のルールを決めずに、毎回処理に悩んでいませんか?
みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。
確定申告の時期になると、私のもとにも多くの方から書類が届きます。
毎年この時期にさまざまなケースを拝見していて感じるのは、経理処理や書類の整理の仕方は、本当に人によって千差万別だということです。
正直なところ、経理というのは「得手不得手」が非常にはっきりと分かれやすい分野のひとつではないでしょうか。
パパッと片付けられる方もいれば、領収書の山を見ただけでため息が出てしまうという方もいらっしゃいます。
もしあなたが「経理はどうも苦手で……」と感じているのであれば、ひとつお伝えしたいことがあります。
それは、「自分なりのルールを、今のうちに決めてしまいましょう」ということです。
例えば、最近増えているネットサービスの利用を想像してみてください。
ECサイトやクラウドツールでは、マイページから「請求書」と「領収書」の両方がダウンロードできることがありますよね。
ここでルールが決まっていないと、思わぬ落とし穴にはまります。
ある時は「請求書」を見て入力し、またある時は「領収書」を見て入力してしまう。
そうすると、同じ買い物を2回分、二重に経費として計上してしまう「ダブり」が発生する可能性が出てくるのです。
「あとで確認すればいいや」と思うかもしれませんが、その「確認」という作業こそが、あなたの貴重な時間を奪う原因になります。
ルールを決めることで得られるメリット
もし二重計上に気づかないまま申告を終えてしまったらどうなるでしょうか。「ラッキー、経費が増えた」とはいきません。
数年後、税務調査が来たときに税務署から「これ、同じ内容で2回処理していますよ」と指摘を受けることになるかもしれません。
悪意がなかったとしても、結果として過少申告になれば、本税に加えて加算税や延滞税を支払う「修正申告」という、精神的にも金銭的にも痛い状況を招いてしまいます。
こうしたミスを防ぐためのルール作りは、決して難しいことではありません。例えば、「経理処理は原則として『領収書』でのみ行う」と決めてしまうのです。
その上で、例外として「領収書がどうしても発行されない場合のみ、請求書で代用する」と添えておけばいい。
これだけで、重複して処理するリスクは劇的に下がります。
また、ルールを決めることは「迷い」を消してくれます。「これ、前に入力したかな?」と不安になり、過去のデータや通帳を遡って確認する時間は、非常にもったいないロスです。
この考え方は、事業が大きくなったときにも活きてきます。
従業員が増え、経費精算を行うようになると、「請求書で申請する人」と「領収書で申請する人」がバラバラに出てくるかもしれません。
かつてのような「ベテランの経理」がいれば、「あ、これ前に社長が持ってきたやつと同じですね」と気づいてくれたかもしれません。
しかし、昨今の人材不足の中、そんな阿吽の呼吸を期待できるベテランスタッフが常にいてくれるとは限りません。
あらかじめ「経費精算は必ず領収書を添付すること」という一貫したルールがあれば、誰が担当してもミスを未然に防げます。
つまり、ルール作りによって得られるメリットを整理すると、以下の3点に集約されます。
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ミス(二重計上や漏れ)を物理的に避けられること
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「どう処理すべきか」と悩む時間をゼロにできること
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自分以外の誰がやっても、必ず同じ結果になること
経理で楽をするためにルールを決める
「ルール」という言葉を聞くと、どうしても「堅苦しい」「融通が利かない」「縛られるのがイヤだ」といったネガティブな印象を持つ方も多いかもしれません。
確かに、形骸化してしまった「意味のないルール」や、実態に合わない複雑な手順であれば、それはただの足枷です。
しかし、今回お話ししているルールは、あなたを縛るためのものではなく、あなたを楽にするためのものです。
経理のゴールは、正しく納税することだけではありません。
「経営の現状を素早く把握し、本業に活用すること」です。判断の回数を減らすことで、経理は速くなります。
「毎回考える」のをやめて、「決まった通りに動く」仕組みを作る。
それが、半年後、1年後のあなた自身の負担を軽くし、ひいては税務的なリスクから身を守ることにもなります。
まずは「請求書と領収書、どっちを正解にするか」といった小さなことからで構いません。自分を守るための「マイルール」、一度見直してみませんか。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。





