「AIを使えば仕事が速くなる」と考えて、実際にAIを使ってみると、その便利さに驚かされるわけですが、使っていくうちに、効率化した割に仕事する時間が減っていないと感じることはありませんでしょうか。今回はそんなお話です。

AIがもたらした「できること」の増加

みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。

多くの人は、AIを活用して仕事の効率化を期待しているのではないでしょうか。

実際、自分で作業するよりも、時間を大幅に短縮してくれるケースは多々あります。

その一方で、作業時間の短縮ではなく

「今までできなかったことが、できるようになる」

という効果もあります。

例えば、一番わかりやすい例がプログラミングです。

以前は業務を効率化するためにプログラムを書こうとすると、ネットや書籍で調べて、自分でコードを書いて、うまく動かなければ原因を突き止めて解決する、といった手順を延々と続けていました。

自分の力が及ばず断念する、なんてことも何度もあったわけです。

ところが、最近では「バイブコーディング」という言葉が使われるようになり、AIの力を借りればカンタンにプログラムを作ることができるようになり、自分の知識やスキルの範囲をはるかに超えたものを作成できます。

このようにいままで「できなかったこと」ができるようになるわけですが、大人であっても「できること」が増えるのはうれしいものです。

こうした経験は、AIを使うこと自体を楽しくさせ、もっと色々なことを試してみようというモチベーションを与えてくれます。

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「AI活用」に時間を使いすぎている?

しかし、ここに落とし穴があります。

この「できることが増える」という感覚に浸りすぎると、AIを使うこと自体が目的になってしまうリスクがあります。

「この作業もAIで自動化できないか?」
「このデータ分析もAIにやらせてみよう」
「もっと効率的なプロンプトの書き方はないか?」

AIの能力を最大限に引き出すための研究(勉強)に、いつの間にか膨大な時間を費やしている自分に気付くわけです。

もちろん新しいスキルを身につけるためには、最初に一定の時間をかける必要があります。

「スキルを身につけるために必要な時間」と「スキルの研究に過剰にかけている時間」の線引きはカンタンではありません。

それでも、本来の目的は、AIを活用して本業の時間を生み出すことだった、という点は忘れずにいるべきでしょう。

気づけば常に新しいツールを探して試してみたり、プロンプトを練ったりする時間に追われ、「効率化を目指しているはずなのに、なぜか毎日忙しい…」という状況に陥っていないか気をつける必要があります。

また、「自分でできる」からといって、本来は他人に頼んだほうがよい仕事まで自分で抱え込んでしまうというリスクもあります。

専門的な知識が必要な業務について、AIはそれなりにきちんとした回答をしてくれますが、そのアウトプットを鵜呑みにするのは危険です。この場合、最終的な責任は常に自分にあります。

専門家に依頼すれば、より確実に、そして安心して進められる仕事を、「AIで自分でできるから」と一人で抱え込み、結果的に多くの時間を費やしてしまっているというケースも起きえます。

先ほど例に挙げたプログラミングも、つくるのは簡単にできたとしても、きちんと動かなくなったときのメンテまで含めて考えたときに、本当に自分でやるべきかどうかは冷静に判断する必要があります。

AIはあくまでツールです。そのツールを使いこなすための勉強や試行錯誤は大切ですが、それが本業を圧迫し、本当にやるべき仕事から遠ざかってしまっては本末転倒です。

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AIを使いこなすための3つの視点

AIに時間をとられすぎないようにするためには、明確な目的意識を持つことが不可欠です。

AIを自分をサポートしてくれるツールとして使いこなすために、以下の3つの視点を持ってみてはいかがでしょうか。

1. 目的と手段を明確にする

まず、「何のためにAIを使うのか?」を常に考えることです。

「単にやってみたいから」ではなく、「この作業の時間を20%削減するため」「この資料の見栄えをよくするため」といった具体的な目標を持つことが重要です。

目的が明確になれば、AIを使うべき作業と、そうでない作業がはっきりします。

2. 自分の役割を再定義する

AIは私たちに「できること」を増やしてくれますが、同時に「やるべきこと」を明確にしてくれます。

AIに任せるべきこと(データ入力、単純な文書作成、情報収集など)と、人間がやるべきこと(意思決定、人間関係の構築など)を明確に区別しましょう。

3. 他人に頼むことを恐れない

AIに任せるのと同じくらい、他人に頼る勇気も大切です。

「自分でできる」からといって、すべてを抱え込む必要はありません。

専門的な知識が必要なこと、自分のコア業務ではないこと、そして何より他人に任せた方が効率的で質の高い結果が得られることは、プロに任せてみてはいかがでしょうか。


AI活用は、単なるツールの使い方の問題ではなく、「自分の時間を何に使うか」という考え方の問題でもあります。

最近AIを使っていて、「時間をかけすぎでは?」と感じる時がありましたので、この点についてまとめてみました。

AIを活用しようと検討されている方の参考になれば幸いです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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