税理士業務における生成AIの活用という話になったときに「通帳のデータ化」が挙がるケースがあります。今回は、この点についての個人的な見解をまとめておきます。
税理士業務で生成AIを活用するにはまずデータ化?
最近では「税理士の仕事でもAI活用しないとダメだよね」的な話は、メディアや税理士の上部団体など含めていろんなところで見かけます。
そうした流れの中で、生成AI活用の入り口として「通帳のデータ化」という話になることがあったりします。
税理士の仕事をしていると、様々な理由からネットバンキングを利用していない方に一定数遭遇します。
こうした時に通帳を見ながら手入力するのは効率的ではありません。そうした要望に応えるものとして、通帳をデータ化するサービスが以前から存在します。
その一方で、最近では多くの生成AIサービスで画像やPDFファイルを読み込めるため、通帳をスキャン等して生成AIに読み込ませてデータ化するといった使い方も、の活用法のひとつとして考えられるというわけです。
通帳のデータ化サービスは有料で、かつデータ処理量に応じた従量課金になっていることが多いため、一定額を支払えばほぼ使い放題の生成AIでデータ化できれば、税理士事務所としてのコスト削減にもつながります。
こうした背景から、生成AIを使って通帳をデータ化することは、税理士事務所にとってメリットが大きいように思えますが、個人的には否定的な立場です。
いまだにSTREAMEDを使っている理由
通帳をデータ化するためのものとしてSTREAMEDというサービスがあります。
最近は生成AIでなくても、AI-OCRを活用した安価なデータ化サービスもあるため、そちらに移行している方も多いかもしれませんが、私はいまもこちらを利用しています。
コスト的には今となってはそこそこする、という感じではありますが、使っている理由が生成AIを使ったデータ化に否定的な立場の説明にもなりますので、3点挙げておきます。
データ化の精度
生成AIにせよ、AI-OCRによるデータ化にせよ、金額や摘要を正しくデータ化しているかといわれると、まだ十分とは言えません。
「せめて金額くらいはきちんとデータ化してよ」と思うことも多いものです。
そのため結局は、データ化されたものを目視で確認し、修正することになるわけですが、個人的にはこの時間がムダだと感じます。
コストは下がるけれど、その分自分のところでチェックや修正対応する項目が増えるのであれば、最初からチェックしたものを納品してもらった方が効率的ではないかと。
結果の安定性
生成AIは、当然のことながらデータ化のためのサービスではありません。
高機能なため、データ化もやろうと思えばできるというものです。
しかも、機能が次々と追加・改良されていくのですが、逆に言えば内部での処理方法がどのように変わっているのか利用者側ではわからず、今日できたことが明日できなくなる可能性もゼロではありません。
また、同じ資料をデータ化したとしても、安定して同じ結果が出るとは限らないという点も、業務においては安心して使えないと考えています。
セキュリティ
生成AIに読み込ませた内容を学習しないようにする設定はありますが、生成AIはデータ化のための正式なサービスではありません。
そのため、生成AIにアップロードしたデータが、そのあとどのように使われるか個人的には不安が残ります。
「心配しすぎ」という意見もあるかもしれませんが、通帳っていってしまえば個人情報のカタマリみたいなものです。
そうした資料を、正式なデータ化サービスでないものに安易にアップロードすることは、セキュリティ管理上あまり好ましくないと考えています。
可能性は低いかもしれませんが、通帳データが漏えいして、それが税理士事務所によるアップロードが原因だとわかった場合、責任が問われることになりかねません。
お客さまの情報を守るという観点とともに、自分の事業をリスクから守るという観点でも、利用には配慮が必要ではないかと。
自分のスタンスを明確にしておく
生成AIは、税理士業務の可能性を広げる画期的な技術であることは間違いありません。
ただ「何に使うか」については、これからさらに研究・検討する必要があると感じています。
これから使い方を検討するにあたっては、「便利さ」と「リスク」のバランスを考えながら、使う必要があるでしょう。
例えば、メールの文章を生成AIに考えてもらうにしても、指示の中にどこまで具体的な内容を入れてよいかといった点も、厳密にいえば毎回気にすべきです。
そこまで気にしていてはまともに活用できないということであれば、規約上「ゼッタイにデータを学習等に使用しない」と謳うものを使うべきでしょう。
今回まとめた内容については異論・反論いろいろあるかもしれません。私自身も「これが絶対的な正解」と思っているわけではありません。
ただ、こうしたサービスを使うにあたっては、どこまではOKなのかということについて、自分のスタンスを明確にしておくべきだと考えています。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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