会計ソフトメーカーなどからインボイス番号のチェック機能についての発表が増えてきたことを踏まえて、インボイス番号のチェックをわざわざ人がやるべきかといったことについて考えてみます。
インボイス番号チェックのソフト対応
最近になって会計ソフトメーカーなどからOCRを使ってインボイス番号のチェックをする機能の発表が増えてきました。
例えばバクラク電子帳簿保存についてはプレスリリースで
従来から「バクラク電子帳簿保存」の無料プランをご用意していましたが、同プランで新機能を追加。請求書等に記載されている適格請求書発行事業者番号が正しいかどうかを自動で判定します。
とインボイス番号(適格請求書発行事業者番号)を無料プランも含めて自動で判定してくれるとのこと。
また弥生会計のスマート証憑管理というサービスのプレスリリースにおいては
証憑を受け取った後にそれが適格請求書であるか、そうでないかの判断を行うこと、その次に仕訳作業を行うことです。しかしながら、一連の作業を人の目で複数項目、複数回行うことは効率が悪く、ミス発生の確率が高くなります。
と指摘した上で
「スマート証憑管理」では、搭載するAI-OCRによりアップロードした証憑の文字情報の自動読み取りを実現、「弥生シリーズ」と合わせて利用することにより仕訳情報を連携できるようになります。
としており、明示はされていませんが今後番号チェック等にまで対応が広がることが期待できます。
インボイス制度が始まるまでの習熟や準備期間を考えると、今年の4~6月頃には他社からも同様の機能が出てくるのではないかと(勝手に)考えています。
インボイス番号を人がチェックすることに価値はあるか?
インボイス制度が始まった後で、インボイスに記載された登録番号をチェックしなかった場合
- 偽の登録番号を記載したインボイスを処理してしまった
- 当初はインボイス登録していた事業者が登録をやめてしまい、その連絡を受けていなかった
といったことが原因で、後日税務調査で指摘されて消費税の納税額が増加する可能性があります。
実務をする上で、実際にこうした問題が発生するケースはあまりないかもしれませんので、継続的な取引をしている事業者に対してはそこまでチェックする必要はないともいえます。
とはいえ、チェックを漏らして最終的に不利益を受けるのはインボイスを受け取った側となるので悩ましい問題です。
では、こうしたチェック作業をわざわざ人がすることに意味があるかどうか。
登録番号チェックのような退屈な作業は慣れてくるとどうしても見落としなどが出てくるものですし、「機械から警告が出て気付く」という状態の方がミスは減るはず。
会計ソフトメーカーなどが登録番号を自動的にチェックする機能を提供してくれるのであれば積極的に活用すべきと考えます。
ただ、現状はデータをOCRで読み取って判定するとなっていますので精度は100%になりません。
理想をいえばデジタルインボイスで受領して番号チェックに精度の問題が出ないようにしたいですが、恐らくいきなりそこまで移行するのは難しいでしょう。
そうなるとOCRを使ってのチェックが前提となりますが、この場合もできるだけ手間をかけたくないものです。
もし紙で請求書を受け取るとわざわざスキャンしてからチェックのためにソフトに保存という手間が発生します。
請求書をデータでもらえれば少なくともスキャンする手間は省けますので、(使用するソフトの機能にもよりますが)インボイス番号のチェックを効率化するために、請求書の受領を紙からPDFに切替えていくというのもひとつの方法でしょう。
ソフトの機能に合わせて最も効率的な手順を検討することになりますが、機械で判定する以上データが必要となります。
紙の場合は必ず「データ化する」という手順が必要となりますので、この手順を避けられるよう最初からデータで受け取る方が効率的でしょう。
効率化のスタートは「この作業ムダ」と気付くこと
今回の話は、「インボイス番号を人手でチェックするなんてムダ」というところからスタートしています。
こんな作業に人をかけたくない
→ 機械でできるのであればやってもらう
→ 機械にやってもらうには紙よりもデータの方が手順が少なくて済む
という考え方をしているわけです。
こういう考え方をするためには、一番最初の段階の
「こんな作業に人をかけたくない」「こんなことを人にさせるのはムダ」
という点に気づけるかどうかがポイントです。
「なんか面倒な作業だけでやり方を変えるのも手間だし、そのままでいいや」
という考え方では効率化は進みません。
「ムダ」をひとつずつ潰していくことで作業にかかる時間は短縮されていきますので、インボイスへの対応により生じる「ムダ」がないか改めて探してみませんか。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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