税金を金融機関の窓口以外で支払う方法のひとつであるダイレクト納付。個人的に課題だと感じている点をまとめておきます。
目次
最近税務署からお願いされること
税務署から税理士に対応して欲しい内容については、税理士会経由などで依頼が来ますが、最近お願いされることが多いのは次の3点。
- 電子申告については添付書類も含めてすべて電子化して欲しい
- 電子納税を推進して欲しい
- インボイス制度の登録を早めに行って欲しい
電子申告そのものについてはかなり普及しましたが、決算書を含めたすべての帳票が電子申告されていないケースもあり、この部分の電子化を進めて欲しいというのが1点目。
申告書提出の電子化が進んできたので、次のステップとして金融機関などの窓口での納付ではなく、振替納税・ダイレクト納付・クレジットカード決済などのキャッシュレスでの納付を推進して欲しいというのが2点目。
これについては、こういったパンフレットなどで広報活動もされています。
インボイスについては、登録が思ったほど進んでいないようで、来年3月に登録申請が集中することを心配して、少しでも早めに登録して欲しいというのが3点目。
で、今回はこのうち2点目の電子納税について、普段感じていることを少しまとめておこうかと。
電子納税といっても、国税(所得税・法人税・消費税など)であれば
- ダイレクト納付
- 振替納税
- インターネットバンキング等
- クレジットカード納付
と様々な方法が提供されています。
ただ、振替納税は個人しか使えませんので、法人が税金を支払う際に使えるのはそれ以外の方法になります。
クレジットカード納付は手数料を納税者が負担しないといけないし、インターネットバンキングでの支払は金融機関がペイジーに対応している必要があるなどの制約があります。
そのため法人が電子納税をする際の方法としては、まずダイレクト納付を検討すればいいのではないかと思います。
そこで今回はこのダイレクト納付について、個人的に感じていることを整理しておきます。
なお今回の記事ですが、申告書を自分で提出して、その申告書に書いてある税金を支払うケースを想定しています。
住民税の特別徴収など、役所が税額を計算して納付書を送ってくるものは今回は考慮に入れていません。
ダイレクト納付をオススメしづらい理由
「法人が税金を支払う際の方法として、まず検討すべきはダイレクト納付」
と書いておきながらなんですが、正直このダイレクト納付という仕組み、現状では使いにくい点が多々あります。
ダイレクト納付を使えば国税だけでなく、法人事業税や法人住民税など地方税もオンラインで納税の手続きを完了させることができますが、それでもオススメしづらい。
その主な理由としては
- 国税と地方税で支払手続きをする際の手順や操作画面が全然違う
- 地方税の仕組み(eLTAX)が使いにくい
です。
同じ税金なんだから同じ画面で一度に処理させてくれればよいものを、国税の支払手続きと地方税の支払手続きは別サイトで行わないといけません。
あまりないとは思いますが、国税の支払手続きが終わった段階で、すべて処理したような気分になってしまい、地方税の支払処理を忘れるという可能性もゼロではありません。
しかも地方税の支払処理をするeLTAXという仕組みですが、手続きの途中で事前に登録した会社名が表示されます。
この表示された会社名には小文字カナが含まれているのに、小文字カナが含まれたままだとエラーになるという仕様。
例えば「サンギョウ」と単語が会社名に含まれていると、エラーになります。
表示された「サンギョウ」を手動で「サンギヨウ」に直さないと次に進めません。
他にも「エー」といった名前が含まれている場合に「ー」が全角マイナスでないとエラーになるのですが、見た目で判断できずトラブルになる方を多く見かけます。
これだけであればまだよいのですが、さらに支払いの手順として
- 申告書を電子申告で提出する
- eLTAXの画面で提出した電子申告データを呼び出して、支払用の情報を作成・送信する
- 送信した支払情報を元に支払い処理を行う
という3つの手順を踏む必要があります。
支払用の情報を作るのと支払いそのものの処理が分かれている、という点は正直理解に苦しみます。
このようにとても使いづらい点が多く、あまり積極的にオススメする気分にならないワケです。
違和感の原因はデジタルに沿った仕組みじゃないから?
ダイレクト納付についてはまだまだ改善すべき点が多いのですが、使っていて感じるいつも違和感を感じます。
その原因を考えたときに、2点思い当たることがあります。
処理が自動化されていないのはなぜ?
まず一つ目ですが、金融機関に行かなくても税金の支払いはできるものの、支払処理が自動化されていないという点。
個人の場合は振替納税という支払方法を使えますが、この方法だと申告書を提出さえすれば、あとは決められた日に指定の口座から自動的に税金が引落されます。
一方ダイレクト納付の場合は、申告書を提出した後に、自分で支払日と引落し金融機関を毎回指定しなければなりません。
恐らく会社毎に資金繰りの都合もあり、また一般的な口座引落しである水道光熱費などと比べると金額が大きくなることもあるため、こうした仕様にしているのだと思われます。
ただ、その点に配慮するのであれば、引落し日は例えば月末に統一しておいて、後から引落し日を変えたい人だけ変えるという方法でもよいはず。
(ただし月末に提出される申告書をどうするかという問題は残りますが)
ダイレクト納付では引落し銀行口座を複数登録できるのですが、申告書に使用したい銀行口座を記載できるようにすれば
申告書の提出→自動的に引落し
という流れを作ることはできるはず。
要するに金融機関に行く手間はなくなるものの、代わりに発生する手間も結構あり、全体としてそれほど効率化されていないのではないでしょうか。
紙の手順をそのままデジタル化している?
電子納税ができる前は
申告書を提出 → 納付書をもって金融機関窓口で支払
という流れでした。
申告書の提出と支払手続きが分かれているのって、要するに従来の流れをそのままデジタルの仕組みに置き換えただけでは?という気がしています。
だから
「申告書の提出がそのまま支払処理につながる」
という発想になっていないのではないかと。
ダイレクト納付については税理士が会社に代わりに支払手続きを行うことができるのですが、これも
「デジタルに不慣れな中小企業だと、ダイレクト納付の手続きができないかもしれないから、代わりに税理士にやってもらおう」
という発想です。
事前の届出さえしておけば、申告書の提出だけで自動的に支払いがされるという仕組みにしておけば
「税理士に代わりに支払手続をさせる」
という発想自体が不要となります。
結局、デジタル的な発想で仕組みが作られていないから、こんな面倒な仕組みになっているのではないかと。
ここまでダイレクト納付に感じている課題をまとめましたが、個人的には電子納税に反対ではなく、もっと進めていくべきだと考えています。
ただ、そのためにはあまりにも今の仕組みがお粗末ではないかと感じていたため、その点についてまとめてみました。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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