コンビニのミニストップが電子レシートを導入するというニュースがありました。電子レシートが電子帳簿保存法とどのように関係してくるのか確認しておきましょう。

ミニストップが電子レシートを導入

先日、コンビニチェーンのミニストップが、電子レシートの仕組みを導入するというニュースがありました。

導入元企業のニュースリリースを確認したところ、12月20日10時に導入されるとのこと。この記事を書いている段階では明日からということになります。

正直な感想としては、

「電子レシートなんて導入されるのはまだ何年も先の話だろう」

と思っていましたので、電子帳簿保存法の処理に関連して特に気にもとめていませんでした。

大手3社ではないとはいえ、コンビニチェーンの全店で導入されるとなると、実際の経理処理として遭遇する可能性は高くなります。

そこで今回は電子レシートを受取った場合に、具体的にどのように保存しておくべきかという点を考えてみたいと思います。

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電子レシートの保存方法を決済手段別に考えてみると

電子レシートを受取るとしたら、当面は今回のような小売業の店舗で受領するケースが多いと思われます。

そうなると支払方法としては、

  1. 会社の決済手段(法人カード等)を使って支払を行う
  2. 従業員が自分の決済手段(電子マネー等)を使って支払をした後に立替精算を行う

の2つが考えられます。

それぞれのケースについて確認する前に、今回導入されるサービスの概要を

電子レシートサービス スマートレシート|東芝テック株式会社

にて確認してみると、電子レシートは専用のアプリに保存されることになるようです。

この前提で電子取引データの保存方法をどうすべきか考えてみましょう。

ケース1:会社の決済手段で支払った場合

専用アプリに電子レシートが保存されることからすると、国税庁から出ている一問一答の問27の次の部分が該当することになるでしょう。

3 第三者等が管理するクラウドサービスを利用し領収書等を授受する場合
⑴ クラウドサービスに領収書等を保存する。
⑵ クラウドサービスから領収書等をダウンロードして、サーバ等に保存する。

アプリ内に何年間データが保存されるか公表資料からはわかりませんので、アプリ内にのみ保存しておくのは、必要なときにデータを取り出せないリスクがあります。

そうなると必然的に(2)の「ダウンロードしてサーバ等に保存」をすべきということになりますが、このときに何をダウンロードしておくべきか?

サービスの説明ページには

表計算ソフトなどで使える「.tsv」形式のレシートデータを、メールで出力可能

とされていますが、PDFへの出力機能はなさそうです(アプリもインストールして確認済み)。

東芝テック株式会社「電子レシートサービス スマートレシート」より抜粋

ちなみに、tsv形式というのはほぼcsvデータと同じものです。「c:カンマ」ではなく「t:タブ」で区切られたデータになりますのでExcelで開くことができます。

国税庁が11月に公表した「お問合せの多いご質問(令和3年 11 月)」の電取追2にて、EDIデータをExcelに変換して保存することも(保存するまでに変更される可能性がなければ)認められています。

このことから考えれば、tsv形式のデータをそのまま保存しておけばいいのではないかと。

ただし、途中でデータが変更されていないことを証明するために、アプリから出力されたメールそのものの提示が必要となる可能性もある点には注意が必要です。

一方、いわゆるスクリーンショットでの保存については、一問一答の問27では

  • 2 発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合
  • 4 従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合

については認める記述がありますが、なぜか3のクラウドサービスを利用して領収書を授受する場合には、同様の記述がありません。

実際の税務調査の現場で画像データを提示したから即否認といったことは考えづらいですが、一問一答を文字通り読めばスクショなどの画像データで保存するよりも、tsvデータで保存した方が無難といえそうです。

ケース2:従業員が立替にて支払った場合

従業員が個人の決済手段で支払い、立替精算したケース。

そもそもこれが会社にとっての「電子取引」に該当するかという点ですが、先ほどの一問一答の問8において

従業員が支払先から電子データにより領収書を受領する行為についても、その行為が会社の行為として行われる場合には、会社としての電子取引に該当します。

とされているため、今回のケースは電子取引に該当します。

この場合の保存方法については、先ほどの問27にある

4 従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合
従業員のスマートフォン等に表示される領収書データを電子メールにより送信させて、自社システムに保存する。
なお、この場合にはいわゆるスクリーンショットによる領収書の画像データでも構いません。

が該当します。

ケース1と異なるのは、スクリーンショット(画像)での保存がハッキリと認められている点です。

アプリにPDFファイルに保存する機能はありませんので、従業員の方からレシート画面のスクリーンショットを添付して提出してもらう必要があります。

経費精算ワークフローを導入済みであれば、そうしたデータの添付もスッキリと行えますが、紙の精算書を提出してもらっている会社では、精算書とスクリーンショットのデータが別々に提出されるため、非常に煩雑になりそうです。

また仮に購入品目が多く、レシートが縦長になってしまった場合、スクリーンショットが複数枚に及ぶなど、実際に保存する場面では細かい問題が出てくるのではないかと想像します。

こうしたことを考慮すると、支払手段については従業員に立替精算してもらうのではなく、法人カード等を導入して会社に集約した方が経理業務としてはスッキリするんじゃないでしょうか。

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思っている以上に電子化が進む可能性を想定しておく

電子レシートが導入されるというニュースがありましたので、導入された際の電子帳簿保存法上の取扱いについて考えてみました。

「電子レシートを受取った時の処理方法なんてどうせ何年も先に検討することになるんだろう」

と思っていましたが、世の中が変わるときには一気に変わるのかもしれません。

変化の兆しに気付いた時にできるだけ準備はしておきたいものです。

なお、今回は電子帳簿保存法の取扱いについて整理しましたが、インボイス制度への影響をどう考えるか。

この点については、次回取り上げてみようかと考えています(取り上げなかったらゴメンナサイ)。

ちなみにせっかくなので電子レシートを試してみようかと思ったのですが、近所にミニストップがありません・・・が、アプリをインストールして確認したところ、他にも既に使えるお店はありましたので、どこかで試してみようかと。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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