最近、専門家に相談することでモヤモヤが一瞬で晴れたという経験をしました。今日の記事では、その経験を皮切りに、「経営者はなぜ信頼できる相談相手を持つべきなのか」について、私の考えをお話ししたいと思います。
専門家に相談してスッキリした話
みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。
いきなり私個人の話で恐縮ですが、私は一応FP(ファイナンシャルプランナー)の資格を持っています。
しかし、恥ずかしながら保険に関しては人に誇れるほど詳しくありません。知識はあれど、実務的な経験や最新のトレンドには疎いのが正直なところです。
ちなみに、私自身は保険代理店もやっていません。なぜ保険代理店をやらないかというと、個人的なスタンスの問題です。
代理店としてノルマがあると、売る必要のない保険を売ってしまうことになりそうで、自分の判断基準がブレそうな気がしてしまうからです。
税理士として「お客様にとって本当に必要なもの」を提供するという、第三者としてのスタンスを崩したくない、という思いもあります。
そんな私ですが、最近、自分の加入している保険の見直しをしようと思い立ちました。
FPの知識があるから自分でできるだろうと、いろいろ自分で調べたり、資料を読み込んだりしたのですが、なかなかどうして。
結局、膨大な情報と選択肢の中で、「イマイチどうすればよいのかわからない」という、残念な状態に陥ってしまいました。
そこで、知り合いのベテラン保険営業の方に相談してみたところ、驚くほど短時間で私のモヤモヤは解決。
長年の経験と業界の知識から来る的確なヒアリングとアドバイスは、自分で何時間も悩んでいたのが馬鹿らしくなるほどスッキリとしたものでした。
知識がある自分でも迷うのだから、まったく知識がない方が悩むのは当然だと、改めて気付いた次第です。
この経験から改めて痛感したことがあります。それは、「すべてを自分ひとりで解決しようとしないこと」の重要性。
自分ひとりでは解決に至らない問題でも、第三者のアドバイスや意見をもらうことで、解決に至る可能性が高くなるというわけです。
経営者が孤独といわれる理由
「経営者は孤独」―この言葉、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。そして、多くの経営者がこの言葉の重みを日々感じていることでしょう。
この孤独感は「最終的な責任と意思決定を担うのが自分だけである」というところから来ています。
わかりやすい例で言えば、従業員の給料を決めるとき。人件費という会社の未来に関わる重要な決定を、その決定によって影響を受ける本人に相談するわけにはいきません。
また、オーナー企業の場合、事業が傾けば、そのすべての責任と影響が経営者に返ってきます。
翻って従業員は、会社が傾けば、極端な話、会社を辞めて転職するという選択肢があります。
もちろん、すべての従業員がそうではないと理解していますが、経営者と同じ熱量で会社のことを考えるのは、立場上、無理があるでしょう。
この立場の違いが、「経営者の孤独」を生む大きな要因の一つです。
だからこそ、例えば「この資金調達がうまくいかないと大変なことになる」といった切羽詰まった状況や、「何百万円・何千万円の投資を本当にしていいのか」といった重大な意思決定に直面したとき、最後は経営者が自分で決めないといけないのです。
しかし、誰しもがスーパーマンというわけではありません。
すべての専門分野に精通し、すべてのことをひとりで判断するのは無理、というのは、最初に挙げた私の「保険の見直し事例」の通りです。
重要なのは、自分と同じ熱量は無理でも、「少なくとも同じ目線で会社全体の視点から相談できる相手」を持っておくことです。
ひとりで考えていても結論が出ない、あるいは自分の思考の枠の中で見落としが出てしまう、ということは往々にして起こります。
外部の信頼できる知見を借りることは、決して恥ずかしいことではなく、むしろ優秀な経営者が行うべき合理的な行動だと言えるでしょう。
この観点から言えば、経営者が抱える悩みに対して、話をしっかりと聞いた上で適切な助言をしてくれる相談相手が欠かせませんし、そうした相手に対しては経営者も信頼を寄せるのではないでしょうか。
だからこそ経営者にとって必要なのは、単なる相談相手ではなく、「信頼できる」相談相手というわけです。
「壁打ち」はAIでも十分?
経営者が相談相手を持つことのメリットを語るとき、思い浮かぶ言葉のひとつが「壁打ち」です。
「誰かに話しているうちに、自分の思考が整理される、解決策が自然と見つかる」といった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
言葉にしてみることで、ぼんやりしていた問題の輪郭が明確になったり、話の途中で「あれ?この考え方で合っているのかな?」と自己修正できたりします。
話し相手は、ただ聞いているだけでも、自分の頭の中を整理する「壁」としての役割を果たし、十分に価値があるのです。
最近はAIの進化が目覚ましいので、「AIで十分」という方もいるかもしれません。
一般的な知識やデータに基づいた回答、あるいは定型的な業務に関するアドバイスであれば、それもOKでしょう。
しかし、「AIでは一般的すぎる」と感じたり、「自社の特殊性や、自分の性格、あるいは地域の事情といった、機微に触れる部分に踏み込んだ、人間的な視点が欲しい」と考えるのなら、やはり信頼できる「人」を見つけておくべきです。
それは私のような税理士などの専門家かもしれませんし、経営者の先輩かもしれません。あるいは、異業種のコンサルタントかもしれません。
大切なのは、その人が「あなたの会社のことを真剣に考え、客観的かつ専門的な意見を述べられるか」という点です。
経営者が信頼できる相談相手を持つことは、単に「悩みを共有する」ということだけではありません。
それは、自社の事業を客観的に見つめ直し、新たな知見を取り込み、最終的な意思決定の質を高めるための投資だと言えます。
孤独な決断を下す前に、ぜひ一度、信頼できる「壁」にボールを投げてみてはいかがでしょうか。新たな一歩を踏み出すための明確な道筋が見えてくるはずです。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
-
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
最新の投稿
経営管理2025年12月11日経営者が信頼できる相談相手を持つべき理由
経営管理2025年12月7日事業の実態を「見える化」するために「経理のルール」をしっかり作る
経営管理2025年12月4日事業のゴール、意識してますか?
仕事術・勉強法2025年11月30日新しいことを始める際の選択肢。「やめる」「手放す」「圧縮する」





