税理士事務所では、お客さまとデータの共有をすることがよくありますが、この際にExcelとGoogleスプレッドシートのどちらが便利か検討してみましょう。
目次
データを共有しておくことのメリット
税理士の仕事をしていると、お客さまから様々なデータの提供をしてもらうケースは多いものです。
例えば、決算の際に棚卸表を提示してもらうといったケースが挙げられます。
税理士事務所としては、加工やチェックのために、できるだけ加工しやすいデータの形で提供してもらえるとありがたいものです。
具体的には、PDFファイルでもらうよりもExcelなどの形式でもらえると後の作業がしやすくなります。
こうした場合は、「集計時の元データを下さい」とお伝えして、データを送ってもらうだけですから、「データの共有」という観点では特に注意すべき点はありません。
その一方で、例えば金銭出納帳を手書きしている事業者に対して、Excelなどに置き換えてもらう場合を考えてみましょう。
このようなケースでは、こちらから金銭出納帳のフォーマットを提供することが多いのですが、意外と細かい入力作業でうまくいかず最初の頃はいろいろと質問を受けるものです。
入力作業中のファイルが相手のパソコン内にあると、質問を受けた際にどのような状況になっているのかこちらも把握できません。
そのためオンラインストレージでファイルを共有して、こちら側でもいつでも内容を確認できるようにしておくとスムーズに対応できます。
記帳代行をこちらで請けている場合には、わざわざファイルを送ってもらう必要もありませんので、お互いの手間を減らすことができますから、まさに一石二鳥です。
Excelとスプレッドシート、それぞれのメリット・デメリット
お客様と入力用のファイルを共有する際には、いくつかの方法が考えられますが、よくあるケースとしては
- ExcelファイルをDropboxで共有する
- Googleスプレッドシートを相手のGoogleアカウントと共有する
ではないでしょうか。
それぞれの方法について、どちらを選ぶべきか、それぞれのメリット・デメリットについてカンタンにまとめるとこんな感じです。
■Excel
- メリット
- 使い慣れている人が多いので操作方法などを説明する必要がない
- セルごとに日本語入力のオン・オフを指定できる
- デメリット
- Excelソフトを購入する必要がある
- インストール版で複数人が同時入力すると競合が起きる
■Googleスプレッドシート
- メリット
- 同時入力を行っても競合などの問題が生じない
- ソフトを購入する必要がない(無料のGoogleアカウントで利用できる)
- デメリット
- 操作に慣れていない人がExcelと比べると少ない
- セルごとに日本語入力のオン・オフを指定できない
それぞれポイントごとに確認しておきましょう。
コストと操作性
相手の方がExcelを持っていない場合は、通常は無料のGoogleアカウントを作ってもらって、Googleスプレッドシートでの共有を検討することになるでしょう。
やはりコスト不要で始められるというのは、Googleスプレッドシートの大きなメリットのひとつです。
その一方で、Excelについては使い慣れている方が多いため、操作についての質問を受けることは少なくて済みそうです。
ただ、この点も以前と比べると、Googleスプレッドシートを使ったことがあるという人は増えているでしょうし、そもそも基礎データの入力にそこまで高度な機能を使ってもらう必要はないともいえます。
日本語入力の制御
Excelやスプレッドシートへの入力に慣れていない方の場合、意外と苦戦されるのが日本語入力のオンオフの切り替えです。
不慣れな方が作成したファイルの場合、よくあるのが
日付が全角で入力されている
というケース。
ファイルからデータを作って会計ソフトにインポートする場合、こうした状況は税理士事務所にとって避けたいものです。
Excelであれば、お渡しするファイルについてセルごとに日本語入力のオンオフを強制的に設定することが可能です。
具体的には
「データ」-「データの入力規則」
で表示される画面内の「日本語入力」を選択します。
ここで「無効」を選択しておけば、そのセルでは日本語入力をオンにすることはできません。

※「オフ(英語モード)」を選択した場合、セルを選んだ時点では日本語入力はオフですが、オンに切り替えることは可能です。
Googleスプレッドシートでは、残念ながら同様の日本語入力を制御する方法がありません。
不慣れな方にファイルを提供する場合には、この点はExcelを採用する大きなメリットといえます。
複数人による同時作業
Excelというより、Dropbox側の問題ではありますが、複数の人が同時に同じファイルに入力した場合、競合が発生して次図のようにファイルが複数作成されることがあります。

これはDropboxで「競合コピー」と呼ばれるもので、競合コピーが作成されると、どのファイルが最新か確認が必要となり非常に煩雑です。
Dropboxでは設定をしておくと、次図のようなDropboxバッヂと呼ばれる表示がされて、現在編集中の人がいるかどうか確認できますが、これも慣れていないと気付かずに編集してしまう人はいるものです。

この点、Googleスプレッドシートはオンラインでの作業が前提となっているため、複数人が同時に作業しても問題は生じません。
複数の方が同時に作業する可能性がある場合は、Googleスプレッドシートを採用する方がトラブルを減らすことが可能です。
相手の状況に応じてツールを使い分ける
入力用のファイル共有方法として、ExcelとGoogleスプレッドシートを比べてみましたが、コストや操作性を考慮に入れない場合は
- ファイルへの入力ルールなど細かい部分を作り込みたい場合はExcel
- 複数人での共同作業が多い場合はGoogleスプレッドシート
というのが私なりの判断基準です。
税理士事務所側としては、ツールをひとつに統一した方がその後の作業がしやすいという意見もあるかもしれませんが、相手の方がきちんと使えなければあまり意味はありません。
相手の状況に応じて使い分けることが、双方の作業性を向上させることにつながるのではないでしょうか。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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