税理士の仕事をしていると給与計算ソフトの使い方などについて相談を受けることもありますが、間違えそうなポイントが多いといつも感じます。今回は給与計算について感じたことをまとめておきます。

給与計算を難しいと感じる理由

税理士の仕事をしていると給与計算ソフトの使い方などについて相談をいただくこともありますが、そうしたケースではわかる範囲で対応しています。

給与計算について相談に乗る中で感じるのは

「給与計算って難しい」

ということ。

口が裂けても「給与計算なんて簡単だよね」とはいえません。

例えば、介護保険料。

20~30代は徴収不要だったのに、40歳になると給料から引かなければなりません。逆に65歳に到達すると給与から徴収しなくてよくなると。

従業員の方の誕生日や年齢なんていちいち覚えていられませんので、こうした対応はやはりソフトに任せるしかないでしょう。

Excelで給与計算するという方法もありますが、変更が必要なときにアラートを出してくれるというその一点だけで、給与ソフトにお金を払う価値があると考えています。

以前は介護保険料などがなかったため今よりもシンプルだったかもしれませんが、それでもソフトなしで給与計算をやっていたのかと思うとすごいなと。

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「給与ソフト使えば簡単にできるでしょ」とも思えない

「給与計算が大変とはいっても、手作業で計算するのが大変なだけであって、ソフトを入れればアラートも出るんだから、給与ソフトを使えばすべて解決」といいたいところですが、そんなに単純では無いのではないかと。

給与ソフトを導入したら、あとは毎月従業員の残業時間を入れるくらいで、社会保険料の料率とかは勝手に対応してくれるというものでもありません。

特に初期設定を間違えると、そのままズルズルとただしくない計算をすることになりかねません。

例えば社会保険料の徴収は原則翌月の給与から徴収しますが、最初の月から徴収しているケース(当月徴収)もチラホラ見かけます。

最初の給与計算をしたら社会保険料が引かれてなかったので、おかしいと思って当月徴収の設定にしてしまう、というミスはあり得るわけです。

この点については給料から徴収した社会保険料を「預り金」で計上して、残高をきちんと合わせていれば気付くはずなのですが、預り金のチェックが甘く、間違っていることに気付かずにそのまま処理されているケースも散見されます。

そのうち、AIが自動的に給与計算をしてくれると期待したいものですが、取引や処理のルールを標準化しないと難しいのではないでしょうか。

AIそのものは本当に優秀だと思いますが、会社の前提条件まで自動で読み取って判断することはできません。

この会社ごとの「前提条件をきちんと与える」というのが、ボトルネックになるような気がします。

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簡単そうに見えてもノウハウはあるもの

今回給与計算について取り上げた状況については、会計ソフトでも同じです。

データ連携して、会計ソフトが提案する科目で処理するだけでは、正しい決算書を作ることはできません。

国の報告書などでは

「クラウド会計などの普及で、記帳水準が上がっている」

といった説明をよく見かけますが、基本的なルールも知らずに適当な処理をして水準が上がることはあり得ません。

ルールを学ぶ機会を準備せずに、ツールだけ準備したらなんとかなるというスタンスでは、どこかで行き詰まるのではないでしょうか。

給与計算や記帳などは、AIにとってかわられる程度の仕事といわれつつ、いまだになくなりそうな気配がありません。

簡単そうに見えても、きちんと処理するためのノウハウは結構あるものです。

給与計算や記帳を自分ですることを否定するつもりは一切ありませんが、やる場合には最低限のルールを学ぶことは必要でしょう。

現状ではソフトを導入しても、設定や運用を正しく行わなければ正しい結果は表示されません。

出力された結果に対してのチェックは必須であり、そのためには最低限の知識は必要という点にご注意いただければと。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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