所得税の確定申告が近づくと「去年の経理処理をしていない・・・」と焦る方もいるのではないでしょうか。経理処理を溜めないためにはどのような工夫をすべきか検討してみましょう。

所得税の確定申告時期が近づいてきました

所得税の確定申告、通常は2/16からですが、今年は暦の関係で2月17日(月)からとなります。

とはいえ、明日(2025年1月6日)には、確定申告書等作成コーナーがオープンする予定となっていますので、年が明けてしまえば開始時期はあまり関係ありません。

国税庁確定申告書等作成コーナー(2025年1月5日時点)

期限は通常3月15日ですが、こちらも暦の関係で今年は2025年3月17日(月)となります。

こちらは「通常より2日遅い!」ということで、いつもより少し余裕があると感じる方がいるかもしれません。

ただ、ギリギリに提出しても精神的に焦るだけですし、メリットはありません。可能な限りサッサと済ませてた方がよいでしょう。

こうした話題を取り上げると、中には

「去年の経理処理、まだ何も手をつけていないどうしよう・・・」

という人もいるのではないでしょうか。

2月中頃になると「今年も確定申告の時期が始まりました」といったニュースなどを見聞きして

「もっと普段からきちんとやっておけばよかった」

と後悔する人が一定数出てくるのでしょう。

経理は溜めてしまうと専門家でも大変です。そこで今回は経理処理を溜めないためにはどうすればよいか考えてみましょう。

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経理のポイントは整理・ルール化・習慣化

経理を溜めないためのポイントとしては、次の3つがあります。

  1. 取引の流れを整理する(整理)
  2. 負担に感じないシンプルなルールにまとめる(ルール化)
  3. 毎日ちょっとだけ経理をする時間を確保する(習慣化)

それぞれ内容を確認しておきましょう。

自分の取引の流れを整理する(整理)

「経理が苦手」「ついつい溜めてしまう」という方のお話を聞いていると、多くのケースで取引の流れがきちんと整理されていません。

取引といっても要するに、売上と仕入・経費の2つが大部分です。

売上についていえば、請求書発行ソフトなどできちんと請求書を発行していれば、売上の集計は簡単ですが、お金を先にもらったので請求書の発行を忘れていた、といったことが起きると売上モレとなってしまいます。

納品が終わった段階で請求書を出すという流れが欠かせません。

また回収についても、振込用の銀行口座を複数提示していると、どこに振り込まれているかわからなくなってしまい、回収状況の管理ができなくなってしまいます。

経理が苦手な人ほど、回収用の銀行口座は減らすべきでしょう。

仕入や経費については、受け取った請求書や領収書は必ず一箇所に固めておくことです。

経理処理が終わったと思っていたのに、あとから領収書が見つかってやり直しといったことはゼッタイに避けるべきです。

そのためには、保管場所をひとつに絞ることが欠かせません。

また支払いについても、量が多いのであれば振込日を決めてまとめて処理した方が効率的です。

思いついたときや督促されてから支払っていては、効率的ではありません。

事業の種類によっては、支払いをクレジットカードに集約して、銀行振込を極力なくすといったことも検討すべきでしょう。

取引の流れがグチャグチャだと経理も大変です。経理をラクにするためには、まず取引の流れを整理しましょう。

シンプルなルールにまとめる(ルール化)

取引の流れを整理できたら、次は経理のルールを決めていきましょう。

このときのポイントは自分が混乱したり負担に感じることがないよう、できるだけシンプルなものにすること。

例えば請求書の発行であれば、月末にまとめてやった方がよい人と都度発行した方がラクに感じる人、どちらもいると思います。

あくまで自分がやりやすいのはどれかという観点でルールを考えましょう。

仕入や経費については、受け取った書類(請求書や領収書)は、繰り返しになりますが、1箇所にまとめることが重要です。

ここを見ればすべて揃っているという状況を作ると、書類を探す時間を減らすことができます。

入力や支払いを定期的に行うのであれば、「入力済み」「支払済み」といった別の箱を準備するのもひとつのやり方ですし、処理がダブらないよう「入力済み」「支払済み」といったスタンプを準備して書類に押す方法もあります。

ご自身にあったやり方を選びましょう。

支払いについても、「○日にまとめて支払う」と決めておいて、その日は手帳やカレンダーに書いておくなどして、支払い処理のための時間をきちんと確保しましょう。

「そうはいっても時間がない」という方もいるかもしれませんが、結局は何に時間を使うかを決めるのは自分自身です。

先に支払い処理のための時間を確保して、残りの時間で他の仕事などを片付けるといった具合に考え方を変えてみませんか。

毎日ちょっとだけ経理をする時間を確保する(習慣化)

経理が苦手な方にオススメしたいのは、毎日仕事が始まる前に10分間だけ経理のための時間をとりましょう、というルール。

例えば前日に立て替えて支払ったレシートの整理だけでも構いません。

あまり負担に感じない範囲でちょっとだけ、だけど毎日(平日だけでもOK)経理を進めましょうというものです。

10分間で強制的に時間を切っても構いません。終わらなければ次の日に続きをやればいいんです。

どれだけ効率化しても、経理には一定の時間が必要です。確定申告の直前に焦るくらいなら、毎日10分ずつやりませんかというものです。

仮に平日毎日10分経理をすると、ザックリですが

10分×5日×50週=2500分≒40時間

を経理のための時間として確保できます。

確定申告期限直前に、夜中まで焦りながら処理するのとどちらがいいか考えてみましょう。

なお「仕事が終わってからやろう」はオススメしません。「今日は疲れたから明日やろう」となる可能性が大です。

仕事の前に少しだけ時間をとってやるというのがポイントです。

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自分でやるのが難しければ外部の力を借りる

ここまでご自身で経理をすることを前提に、経理処理を溜めないためのポイントについてお伝えしました。

とはいえ「どう頑張っても経理は苦手」という方はいるでしょう。

私だって苦手なことはたくさんあります。人によってはその苦手なことが「経理」というケースもあるでしょう。

そんな時は素直に外部の人の力を借りることも考えてみましょう。

苦手なことに時間と労力をかけるよりも、得意なことに集中した方が売上が上がる可能性は高くなります。

経理のやり方に正解はありません。人それぞれ自分に合ったやり方がありますので、何が自分にとってベストかぜひ検討してください。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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