複数人でチェックした方がミスが見つかる確率は高くなりますが、そうした環境にない場合はミスを防ぐために何をすべきでしょうか?今回は一人でチェックする時の対処法についてです。
目次
「税理士ひとりでやってて怖くない?」
現状、税理士ひとりと入力補助ひとりの2名体制で仕事をしていますが、たまに他の(規模の大きな事務所の)税理士さんから聞かれることがあります
「税理士ひとりでやってて怖くない?」
と。
そのあと続けて
「ミスをどうやって見つけるの?」
といった内容の質問を受けるわけです。
もちろんひとりでチェックするよりも、2人以上の目でチェックした方が、ミスが見つかる可能性が高くなるのは間違いないでしょう。
ただ、これはあくまでチェックする人全員が、同じように責任感を持ってチェックすることが前提です。
「所長が最終的にちゃんとチェックするだろう」
「なにかあっても最終的には所長の責任だし」
といった意識でチェックする人がいると、ミスが流出する可能性はゼロではありません。
多くの人がチェックすれば間違いが起きないのであれば、大企業でミスや問題は起きないはずですが、実際はそんなことはありません。
もちろん「ひとりでやっていて怖くない」といえばウソになりますが、メリット・デメリットいろいろと判断した上で現状の体制でやってますので、ひとりでチェックするための仕組みはいろいろと工夫しています。
複数人でチェックできない場合の対処法
複数人でのチェックを実施できない場合、どのような点に気をつけるべきでしょうか。
基本的には、次の3つがポイントになると考えています。
- 明日の自分にチェックを依頼する
- チェックリストを整備する
- 自分が「ゴールキーパー」だという意識を持つ
「明日の自分」にチェックしてもらう
ひとつめはよく言われることですが、作った資料は少なくとも一晩寝かせてからチェックします。
一晩寝るだけでも不思議なもので
「なんでこんなミスしたんだろうか?」
と思うような誤りが見つかるものです。
経験上、「今日の自分」と「明日の自分」は別人だと考えています。もちろん完全な別人にはなれませんが、適切に時間を空けることで異なる視点でチェックができます。
なので「今日の自分」が作った資料は「明日の自分」にチェックしてもらいます。これで擬似的に別の人にチェックしてもらう体制を作れます。
ただ、この方法では少なくとも一晩空けるという時間が必要です。もし資料が提出期限当日に完成していたのでは、こうしたチェックはできません。
だからこそ、スケジュールに余裕がなくならないよう普段から注意しています。
チェックリストで品質を維持する
「明日の自分」に依頼するとはいえ、やはり同一人物であることに変わりはありません。
心身の調子が悪かったりすると、普段であればきちんと確認する点を見落としてしまう可能性があります。
その日の体調などでチェックする項目が変わってしまわないよう、申告書の作成など定型的な業務については、チェックリストを作成し、リストに従ってチェックを行います。
チェックする項目がブレなければ、他の人にチェックをしてもらえなくても、一定の品質を保つことができます。
もちろんチェックすべき項目のモレに気付いたり、チェックのやり方を変えるべき点が見つかれば、チェックリストをアップデートすることは欠かせません。
「ゴールキーパー」だという意識を持つ
「ゴールキーパー」でなく、「最後の砦」でも「責任感を持つ」でも言い方は何でもいいのですが、要するに自分のチェックが漏れるとミスが流出するという意識をきちんと持つことが大事です。
こういうことを書くと
「結局、最後は根性論じゃん」
なんて思われるかもしれませんが、こうした意識を持つことでチェックする中で感じる
- ちょっとした違和感
- 気になったこと
をきちんと調べて潰してから仕事を終えるようになります。
複数人でチェックしてもミスが流出してしまうのは
「最後は誰かがチェックしてくれる」
という意識を全員が持ってしまうことが原因です。
だからこそ
「ミスは自分のところでゼッタイ止める」
という意識を持っておくことは、意外と大事なポイントなんじゃないかと思ってます。
依頼する側からすれば「間違ってなくて当たり前」
ひとりでチェックする際の注意点について検討しましたが、こうした話はあくまで税理士側の問題でしかありません。
依頼するお客様からすれば、依頼先に税理士がひとりしかいなかろうが、100人いようが
「プロに依頼しているんだから、当然正しいものを提示してもらえる」
と考えるはずです。
プロとして仕事を受ける以上は、こうした期待にきちんと応えられるよう、最善の結果を提供するための仕組みや工夫を日々改善していくしかありません。
今後も
「他にチェックしてくれる人がいないから、仕事が甘いんじゃないの?」
「この人に仕事任せて本当に大丈夫?」
なんて言われることがないよう、日々精進してまいります。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。