税理士は中小企業にとっての「何でも屋」と捉えられることもありますが、これはそれほど悪いことではない気がします。今回はそんなお話です。

とりあえず税理士は何でも知っていると思われている?

大企業の顧問税理士だと状況は異なるかもしれませんが、中小零細企業の顧問をしていると税理士にいろんな質問が飛んできます。

「これって税金かかるんですか?」
「この取引ってどうやって仕訳を切ればいいんですか?」
「クラウド会計でレシート保存するのどうすればいい?」

といった質問であれば本業なので全く問題ありません。

実際には、こうした質問以外にも

  • 人事労務の手続きに関するもの
  • 人の採用に関するもの
  • 税法以外の法律に関するもの

といったものから「パソコンの設定どうしたらいい?」といったものまでいろいろ飛んで来ます。

こうした状況になる理由としては

  • 他の士業や専門家と比較して接する機会が多い
  • (人によりますが)接する機会が多いと話をしやすくなる
  • なんかよくわからないけど何でも知ってそうな雰囲気がある?

といったところでしょうか。

こうした質問の中には他士業の業務に関わるものもあり、こちらで対応できないケースも多いのですが、このような形でいろんな質問を受けること自体は悪いことではないと考えています。

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税理士は「何でも屋」であるべきか?

何でも質問を受けてそれらを捌くという立場は、中小零細企業にとっての「何でも屋」であるといえます。

リソースが限られる中小企業にとって、とりあえず困ったときに最初に相談できる相手がいるというのは悪いことではないでしょう。

それこそ

「パソコンがトラブった、どうしたらいい?」

といった税金にまったく関係ない質問であっても、相談できる相手がいるというのは小さな会社の経営者にとっては一種の精神安定剤のようなものになるはずです。

労務や法務の相談については別の専門家につなぐ、役所に直接確認してもらうといった案内をすることしかできないケースも多いですが、質問に対してきちんと交通整理をするということも価値のある対応です。

そしてこうした交通整理をするには、やはり最低限の基礎知識を持っておく必要があります。

ところで、こうしたいろんな質問って意外と「雑談」をする中で出てくることが多いものです。

効率だけを追い求めると「雑談なんて時間のムダ」となるかもしれませんが、こうした話の中からいろんな質問が出てきて、それがその会社にとっての対処すべき課題であったりします。

だからこそ気軽に「雑談」できる関係性を作っておくのは、この仕事にとって大事なことです。

こうした関係性がないと、その会社の本当の課題が見えてこないこともあります。

ちなみに「何でも屋」だからデジタル化の支援も、という話になるかもしれません。

税理士法の改正により

(税理士の業務における電磁的方法の利用等を通じた納税義務者の利便の向上等)
第二条の三 税理士は、第二条の業務を行うに当たつては、同条第一項各号に掲げる事務及び同条第二項の事務における電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。第四十九条の二第二項第八号において同じ。)の積極的な利用その他の取組を通じて、納税義務者の利便の向上及びその業務の改善進歩を図るよう努めるものとする。

という条文ができて、こうしたことを税理士の業務として求められているという話もあります。

ただこれって私個人としては「申告とか納税を電子化してね」という印象なので、そこだけやっても中小企業のデジタル化が進むとも思えません。

あまりこうした法律の方向性は気にせずに、やれる人は自由にやればいいんじゃないかと思ってます。

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知識・関係性・課題抽出

税理士が中小企業にとっての「何でも屋」であろうとするのであれば、税金以外の「知識」も欠かせません。

でも「知識」だけあってもダメで、いろいろと相談してもらえるだけの「関係性」も必要でしょう。

その上で、そうした相談内容から会社にとっての「課題を抽出」して整理してあげることで、いろいろとお役に立てるのではないかと考えています。

きちんと仕事をしようとすると知っておくべきことが山のようにあって大変ですが、合う人にとってはおもしろい仕事でしょう。

「何でも屋」ということは、切り口はいくらでもあるということです。

経営者の皆様も税理士と「雑談」してみませんか?

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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