仕事柄、経営者の話を聴くことが多いのですが、しっかりと話を聴くことは意外とできていないものです。自身の反省も含めてまとめておきます。
事業をしている人は話したいことがたくさんある
「経営者は孤独」というのはよく言われることのひとつです。
事業に責任を持つ立場として悩みは多いですが、従業員に愚痴をこぼすわけにもいかず、仮に事業について従業員に意見を求めたとしても自分と同じ目線での回答を期待できないことがほとんどです。
そのため中小企業などでは税理士がそうした話し相手・相談相手になることもよくあります。
こうした背景があるため経営者の方は事業について話をできる機会があると、話したいことがたくさんあるわけです。
税理士としては自分からいろいろとアドバイスをする前に、経営者の頭の中にあるものをすべて吐き出してもらうことが重要です。
人に話をするだけでも、自分の頭の中は整理されるもの。
場合によってはこちらから何もいわなくても、経営者の方が話をしながら
「あっ、そういうことか。こうすればいいんだ。」
とご自身で答えにたどり着くケースもよくあります。
経営者の方が思考を整理できるように、安心して話をできる環境を整え、できるだけ思考を邪魔しないように話を聴くことも税理士の大事な仕事のひとつでしょう。
相手が「すべて」話し終わるまで待っているか?
ここまで書いたようにできれば理想的ですが、困ったことに税理士という人種も仕事に関しては意外と話したがりな人が多い気がします(私だけかもしれませんが・・・)。
話を聴いていると
「あれを説明してあげた方がいいな」
「これは伝えておかないと後で困るのでは」
「あっ、ここはちょっと勘違いされているかも」
などと頭に浮かんできて、ついついいろんなことを話したくなるものです。
「きちんと相手の話を聴こう」と普段から意識しているつもりなのですが、最近できてないなと感じることが増えてきました。
具体的にいいますと
「相手と話し出すタイミングが被ることが多い」
という点です。
こちらとしては「相手が話し終わった」と思って、お伝えしたいことを話し始めるわけですが、実はまだ話したいことがあったと。
これって要するに、相手の方が話したいことを「すべて」話し終えるまで待てていないということです。
話したいことが残っているのにこちらが話し始めてしまうと、相手の方の思考を中断することになってしまいます。
せっかく思考を整理する手助けをしようとして話を聴いているのに、これでは逆に相手の邪魔をすることになりかねません。
阿吽の呼吸で相手の様子を見て自分が話を始めるタイミングを判断するというやり方もありますが、そこまでの境地に達するのは簡単なことではありませんし、きちんと形にしないコミュニケーションに頼るのは確実ではありません。
それよりも自分が話し出す前に
「今、話をしたいことはこれですべてですか?」
「他に気になることはありませんか?」
「あと話しておきたいことないですか?」
などといった形でひと声かけた方がいいのだろうなと。
「自分の話したいことはとりあえず全部話した」と感じるスッキリした状態のときにこちらの考えを伝えた方が、言われたことも受け止めやすいはずです。
簡単なようで意識しないとできないもの
経営者などとのコミュニケーションについてまとめてみましたが、書くのは簡単ですがいざ実践しようとするとなかなかできないものです。
普段からかなり意識しておかないと、自分が話しすぎてしまいます。
聴く側には「あ、これ今言いたい」という衝動を抑えるための忍耐が必要とされます。
さらに言えば、こちらがひとこと言うとさらにいろんなことを思いつくのが経営者です。
すべて話してもらったと思ってこちらがひとこと伝えると、そこからまたいろんな話が出てくるケースもあり、それほど単純なものではありません。
とはいえ、話をする際には
「相手の思考の流れを邪魔しない」
と意識しておくだけでも、こちらの聴く姿勢は変わるもの。
私も改めてこうした点を意識しつつ、いろんな方のお話を伺おうかと。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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