年末調整の処理がこれから本格化してきますが、今年から導入された年末調整の電子化のうち、マイナポータルに保険料控除証明書を取込むための連携手順について確認しておきたいと思います。
目次
マイナポータル連携で「カンタンに」保険料控除証明書が取り込める?
今年から始まった年末調整の電子化、マイナポータルを使えば保険料控除証明書をデータで取込み、そのまま国税庁提供の年調ソフトに取り込めると謳われています。
どの保険会社が対応済みかについては、国税庁の以下のサイトに掲載されています。
この中に自分自身で加入している保険会社もありましたので、遅ればせながら実際の使用感を確認しておこうと思い、マイナポータル連携での保険料控除証明書の取込みを試してみました。
結論から言えば、
「保険会社によっては、保険会社と民間送達サービスの連携部分がわかりにくい」
です。
マイナポータル連携を使って保険料控除証明書のデータを年調ソフトに取り込むには、パソコンでの作業を前提とした場合には、
- マイナンバーカードの取得とICカードリーダーライターの準備
- マイナポータルでの利用者登録
- 民間送達サービスの開設
- 保険会社と民間送達サービスの連携手続
- 年調ソフトでのデータの取り込み
という手順が必要ですが、今回苦戦したのは「4. 保険会社と民間送達サービスの連携手続」の部分でした。
2・3・5については、国税庁が提供する以下の動画で大まかな手順を確認できますが、4については保険会社のサイトを確認してくださいとのこと。
ところが、保険会社のサイトをいくつか確認しましたが、会社ごとに対応がバラバラ。
そこで今回は、この4の手順について確認をしておきましょう。
なお、3の民間送達サービスには、「MyPost」と「e-私書箱」の2つがありますが、現時点で対応している保険会社はすべて「e-私書箱」を利用していますので、こちらだけ開設すれば十分です。
かんぽ生命が対応した際には、日本郵便のサービスである「MyPost」を使う可能性が高いとは思いますが、記事執筆時点ではかんぽ生命はマイナポータル連携未対応となっています。
保険会社と民間送達サービスの連携手順
この手順については、いくつかつまずきそうなポイントがありました。
具体的には、
- 3で民間送達サービスを開設した後、その画面から直接連携のためのページに移動できない
- 保険会社と民間送達サービス連携を申し込む画面がなかなか見つからない
- 上記画面で申込しただけでは、連携が完了しない(申込確認メールの受取後に連携手続が必要)
の3点です。詳細は、以下の手順の中で説明していきます。
①e-私書箱開設完了後の画面の確認
マイナポータル内で、e-私書箱の開設を終えると以下の画面が表示されます。
保険会社名の右横の「サービス案内」をクリックすれば、すぐに連携手続ができると思ったのですが、「あとは手続用サイトで手続してね」という旨のメッセージが表示されるだけで、しかも手続サイトのリンクも掲載されていません。
ここが最初につまづきそうなポイントです。
②連携手続サイトを探す
連携手続を行うためのサイトですが、保険会社のサイトを見ても説明がほとんどないケースがあります。
「(保険会社名) マイナポータル連携」で検索して、それらしき説明が出てくる保険会社もありますが、今回例として挙げるアフラック生命では情報がありませんでした。
やむなく契約者専用サイトである「アフラックよりそうネット」を開設し、その中の手続の一つである「生命保険料控除証明書の発行・再発行(電子データ)」というメニューからようやく「アフラック マイナ手続ポータル」にたどり着きました。
このリンク先、「よりそうネット」を開設しなくても使えそうですが、見つけるのにかなり手間取る状況です。
ちなみに、日本生命の場合には、今回説明する手順が網羅されているページがありましたが、保険会社ごとに対応がかなり異なるます。
マイナンバーカードを利用した発行方法(「控除証明書電子交付サービス」のご案内)
③手続ポータルで利用申込を行う
上記の「マイナ手続きポータル」画面の右側にある「利用申込」をクリックして
- メールアドレス入力
- マイナンバーカード読み取り
- 証券番号等の入力
等の作業を行い、申込を行います。
ここで注意しないといけないのは、
「利用申込をしただけでは、まだ連携手続は完了していない」
という点です。
利用申込をした後、マイナポータルにデータが入ってくるのを待っていたのですが、いつまで経ってもデータが来ない。
つまり、この手続は、このポータルサイトを利用するための登録手続であり、マイナポータルと連携するための手続ではないということです。
利用申込後に、「本登録完了のお知らせ」といったタイトルのメールが届きますので、その後に連携手続が必要となります。
④e-私書箱との連携を行う
登録完了のメールを受け取った後に、先ほどの「アフラック マイナ手続きポータル」の「ログイン」ボタンをクリックしてログインします。
すると、以下の画面が表示されますので、「はい」をクリック。
この後、「e-私書箱連携」という画面が出てきますので、下までスクロールして表示される「e-私書箱につなぐ」をクリック。
e-私書箱の画面に遷移しますので、「すでにアカウントをお持ちの方はこちら」をクリックして、マイナンバーカードでログインします。
同意確認の画面が表示されたら、「同意する」にチェックを入れて、「連携」ボタンをクリック。
「e-私書箱連携完了」と表示されれば完了です。
左側の電子ポストをクリックすると、保険料控除申告書の電子データを発行したとのメッセージが配信されていました。
なお、電子データ発行のタイミングは、保険会社によって異なるようです。連携完了後にすぐに表示されないケースもあるようです。
この後マイナポータルにログインすると、「あなたへのお知らせ」欄にメッセージが表示されます。
これで国税庁の年調ソフトに保険料控除証明書データをインポートする準備が整いました。
年末調整電子化元年、完全電子化までの道のりは遠そう
保険会社と民間送達サービスを連携する手順を解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
手順1~4は一度設定してしまえば、来年以降は不要ではあるものの、保険会社の対応状況によっては、そこまでたどり着けずに途中で断念する方がいるのでは、というレベル。
今年は時間がない中で保険会社も対応しているため、細かい説明まで手が回らなかったのかもしれませんが、どの保険会社でも手順がほぼ同じということを考慮すると、統一的な説明サイトがあってもよかったのではないかと。
この状況だと、今年マイナポータル連携を使って保険料控除証明書データを取り込む方は、ごく少数にとどまるのではないかという気もします。
マイナポータルとの連携については、所得税についても使えるという話がありますので、継続してチェックしていきたいと思いますが、年末調整の手続がすべて電子化されるというのは、まだまだ先の話かな、と。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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