税金の話をするときに、正確さにこだわりすぎて、わかりにくくなっていないか。海外で英語を使ってコミュニケーションした際の経験から、考えてみたいと思います。
目次
ノンネイティブと話すときに大事なのは、正しい英語よりわかりやすい英語
会社員時代の海外出向で、
イギリス(ウエールズ) → チェコ (→ 日本) → スロバキア
と経験しました。
すべてヨーロッパでしたので、現地スタッフとの意思疎通は英語で行っていました。
ヨーロッパと聞くと、「ほとんどの人が英語話せるんでしょ」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実際はそんなことはなくて、イギリス以外では工場のラインワーカーで話せる方はまれ、スタッフでも英語は苦手であまり話したくないという人も結構いました。
イギリスでは母国語として話す人たちに囲まれていたので、チェコに赴任した直後は、その感覚のまま、
「正しいきちんとした英語を話さないと」
といった感じで肩に力が入っていましたが、そもそもお互いに母国語でない英語を使っているわけです。
話の中でどう表現していいかわからずに、お互いに「困ったね」といった表情を浮かべたり、少し難しい単語使って説明したら相手がその単語知らなくて伝わらなかったり、などなどストレスを感じる場面が何度もありました。
そうした経験から気付いたのは、
- 文法的に正しいとか
- 発音がキレイとか
- 表現が洗練されているとか
そうしたことは二の次で、一番大事なのは「相手に伝わるようにわかりやすく英語を話す」ということ。
それ以来英語で話をするときは、
- とにかくできるだけカンタンな単語を使う
- 自分が知っている単語でも相手が理解できなさそうであれば使わない
- 難しい内容であってもカンタンな単語で表現できるよう言い換える
といったことを心がけるようにしました。
そうすると、相手もこちらの話を理解してくれるようになり、コミュニケーションの際に感じるストレスがかなり減ったわけです。
税金の説明は、英語ネイティブがノンネイティブに話をする状況と同じ
では、「イギリスだとストレスが少なくて済んだのか?」というと、そうではなくて、実は逆のストレスを感じていました。
イギリスの人たちが心の中でどう思っているかわかりませんが、
「英語は世界共通語だ、それくらい理解できるだろ」
って感じで、話すスピードとか配慮なく普通に話をしてきます。
よくわからない単語も織り交ぜてくるし、こちらは内容を理解するのに必死なのに、
「で、どうするんだ?」
と結論をさっさと求めてくる。
「こっちは母国語じゃないんだから、ちょっとは配慮してくれよ!」と心の中で文句を言いながら、コミュニケーションを取っていました。
で、ここでふと気付くんです。このときのイギリス人って、税金の説明している税理士と一緒じゃないかと。
例えば申告書の説明するときに、
「今回の法人税の申告につきましては、前年よりも販売が増加したことに伴い、税前利益が増加し、所得金額としては前年より増加。そのため法人税は昨年よりも増加するところですが、従業員の賞与を増やしたことにより、所得拡大促進税制が適用できたため、税額控除の適用があり、最終的には法人税は前年よりも減少しました。」
といった感じで説明をしてしまうことはあるんじゃないかと。
「税前利益と所得?所得拡大促進税制?何いってるかよくわからん。もっとわかりやすく説明してくれ!」
という経営者もいらっしゃるでしょうし、イギリス時代の私のように心の中で、
「こっちは税金の専門家じゃないんだから、もう少し配慮してくれよ」
と思っている方もいるかもしれません。
ついつい法律に則った正しい説明をしないといけないと考えてしまいますが、知らず知らず聞く側にストレスを与えている可能性が大きいですし、「聞いてもよくわからんから、どうでもいい」と税金に対する興味を失わせてしまっているかもしれません。
相手の立場に立って考えられているかどうか、自問してみる
結局のところ大事なのは、「自分の正しさ」を貫くことではなく、説明を受ける側の立場に立って考えることができているかどうか。
もちろん誤った説明をして良いわけではありませんし、誤解を与えるような表現も避けるべきです。
とはいえ、そもそも伝わらなければ説明をすること自体が無意味になってしまいます。
税金の話って、どこまで行ってもカンタンになることはありませんから、説明の仕方に絶対的な正解はないんですが、
- イギリスのときに感じたしんどさ
- チェコやスロバキアで感じた相手が理解してくれたときのうれしさ
こうしたことを忘れずに、聞く側の立場に配慮して、どのように説明すべきか考えていきたいものです。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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