ひとりで仕事をされている方の場合、マニュアルを作成されることは少ないのではないでしょうか?そこで、ひとりで仕事をしていても、マニュアル作成が仕事に役に立つ理由を考えてみたいと思います。

マニュアルなんて作るのメンドクサイだけじゃないの?

「マニュアル」と聞くと、皆さんはどのような印象を持たれるでしょうか?

「作るのに時間がかかる割に、人から使ってもらえない・感謝されない」というようにネガティブに捉える方もいれば、

「担当者が急に休んだときに、マニュアルがあったので助かった」と、いざというときに役に立つものと考える方もいるでしょう。

ただ恐らく一般的には、「作れと言われたら、メンドクサイもの」と考える方が多いのではないかと。

そんなマニュアル、組織で働いていないフリーランスの方に、「作った方がいいですよ」とお伝えしても、ほとんどの方は、「引き継ぐ相手もいないのに、なんで作らないといけないの?」と思われるでしょう。

そこで、ひとりで働くフリーランスでも、マニュアルを作った方がよい理由を、このあと挙げてみます。

例えば、毎月の請求・経理処理などを念頭に読んでいただければ、イメージが湧くのではないでしょうか。

広告

マニュアルが仕事の役に立つ3つの理由

理由1:書いておかないと忘れるから

マニュアルを作成する必要があるのは、「繰り返す業務」です。次にその業務を行うときも、基本的に同じ手順で行う必要があります。

ところが、どんな人であれ、多かれ少なかれ忘れてしまうものです。前回行った業務についても、

「あれ、これ前回どうやったっけ?」

と思い出せないケースはよくあります。

そんなときにマニュアルを作っていないと、前回の資料を確認して、その手順をもう一度最初から確認しなければなりません

こうした時間のロスを防ぐことも、仕事の効率化には大きく影響します。

ちなみに、自分で書いた過去のブログを読むと「自分でこんなこと考えてたんだ」と思うことがよくありますが、過去の自分と現在の自分、そして将来の自分は別人であると考えるべきです。

だから、マニュアルは、現在の自分から将来の自分への引継ぎのために作るべきなんです。

理由2:文書にまとめることで、頭の中の整理ができて課題が見つかる

慣れた作業だと、頭の中に手順がすべて入っていて、何の問題もなく仕事が流れていきます。

ところが、そうした作業を文書にまとめようとすると、

「なんで自分はこんな段取りの悪い手順で、作業をしているの?」

という疑問を持つことがあります。

頭の中の情報については、なかなか全体像が見えてきませんが、マニュアルにまとめるという作業を通じて全体像を把握し、それが課題を見つけることにつながる可能性があります。

課題が見つかったのであれば、その課題を解決することにより、作業効率の向上が期待できます。

だから、自分の仕事の流れを見直すきっかけとして、マニュアルを作るべきなんです。

理由3:将来人を雇う必要が生じたときに役立つ

今はひとりで仕事をしていても、将来事業が大きくなり、人を雇うことになるかもしれません。

事業が大きくならなくても、一時的に忙しくなり、アルバイトを雇う可能性もゼロではありません。

大企業などで計画的に人を採用しているケースを除けば、仕事が回らなくなり、急遽人を雇うことになったというケースが多いと思います。

経験のある方はおわかりになると思いますが、業務多忙になり、それをなんとかするために人を雇ったものの、ただでさえ忙しいのに自分の仕事をしながら、人に仕事を教えるというストレス。これは本当につらいものです。

こんなとき、もし簡単なものであってもマニュアルがあれば、

「まずこのマニュアル読んで、わからないところ質問して」

という対応を取ることができます。

このような対応がとれるだけでも、こうした状況でのストレスはかなり削減されます。

はっきりいって、人を雇ってからマニュアルを作成する時間はありません。

だからこそ、将来人を雇ったときに自分の負担を減らすためにに、ひとりで仕事をしているうちからマニュアルを少しずつでもまとめておくべきなんです。

広告

「自動化」よりもまず「マニュアル化」、順序が大事

将来的に人を採用したときのことも想定して、マニュアルを作成すべきと書きましたが、

「Excel上の作業であれば、マクロで自動化しておけば、人を雇う必要もないし、マクロのコードがマニュアルそのものになる」

と考える方がいるかもしれません。

しかしながら、マクロから作業手順を読み解くのは大変ですし、自動化された作業に慣れてしまうと、自動化前にどのように作業していたか思い出すのは、かなり大変な作業です。

仮に自動化するのであっても、まず必要なのはマニュアル化です。作業手順を明確にした上でマクロを組まないと、マクロを書く時間も結果的に長くなってしまいます。

「マニュアル化」=業務手順の明確化、をしてから、それをマクロやプログラムのコードに落とし込む、この流れを意識しておくことは大事です。

ちなみに、「マニュアルはいつ作るべき?」という疑問がお持ちの方もいるかもしれません。

個人的には、「あれ、これ前回どうしたっけ?」と仕事の手順のどこかで詰まったときに、その部分だけでもよいのでマニュアルを作成し、必要に応じて順次書き足していくという方法をオススメします。

マニュアルを作るのは、誰にとっても気が進まない仕事ですが、将来に向けた仕事と位置づけて、少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
広告