インボイス制度が始まると登録番号のチェックが必要となります。どこまでチェックすべきかという点と、会社としてチェック方法をルール化すべき理由についてまとめておきます。
インボイスの登録番号をどこまでチェックするか問題
2023年10月から消費税のインボイス制度が始まると、インボイスに記載の登録番号をチェックすべきかどうかという問題が生じます。
なぜ登録番号のチェックが必要になるのか?
ある事業者がインボイス発行のための登録をしていないのに、適当な登録番号を書いて請求書を発行したとします。
この請求書を受け取った事業者が、この請求書をインボイスと信じて経理処理し、税務署に支払う消費税を計算して納税します。
税務調査において、この請求書がインボイスでないとわかった場合、消費税を修正申告して、差額を追加で納税するように言われることになります。
これがインボイスの登録番号チェックが必要となる理由です。
ここまで読んで
「ウソの書類を発行した方が悪いのに、なんでウチが修正申告しないといけないの?」
と思った方もいるかもしれません。
残念ながら支払った消費税を差し引くには「インボイスの保存」が条件となっていますので、自分の手元にある「インボイスだと信じた書類」がインボイスでなければ税務署に支払う消費税額は増えます。
とはいえ継続的な取引先に対して、わざわざウソの書類を発行して取引停止といったリスクを冒す可能性は低いのでは、といった意見もあります。
さらにいえば、偽のインボイスを発行すると「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が課されることになっています。
こうした理由から、インボイスの登録番号を細かくチェックする必要はないという考え方もできるでしょう。
そこで今回は、インボイス登録番号のチェックについての考え方を整理してみたいと思います。
ルール化により会社としての方針を明確にする
登録番号をどこまでチェックするかについては、様々な考え方があります。
例えば
- 新規取引先のみ取引開始前にチェックする
- 継続取引ではない一見の取引先のみチェックする
- 金額ルールを決めて、一定金額以上の請求書についてチェックする
といった方法があります。
どこまでチェックするかは会社の実情に応じて決めていくべきものですが、個人的な意見としては
「会社としてのチェックルール」
をきちんと作っておくべきと考えています。
ルールを作らずに、どこまでチェックするかを経理担当者などの裁量に任せてしまうとどうなるか。
もし高額の請求書の中に偽インボイスが混じっていて、消費税の修正申告が発生したとします。
多くの経営者は恐らく
「経理は一体を何をチェックしてたんだ」
「購買担当者は何もチェックしてなかったのか」
という反応をされるのではないでしょうか。
もちろん担当者が気付かなかったことにまったく問題がないとはいいません。
しかしこうしたチェック体制は個人の能力や善意の対応に頼るべきものではありません。
会社の方針としてどこまでチェックするのかをきちんと決めておき、ルールに落とし込んだ上で事前に承認しておくべきです。
担当者がルール通り処理しているのに問題が起きたら、それは承認した上司を含めてルールの決め方が甘かったということ。
ルールを見直して再発防止に努めるべきでしょう。
会社としてルールを決めずに、問題が起きたときに担当者が責められるのでは、担当者は肩身の狭い思いをしてしまい、働きづらい環境になってしまいます。
受け入れるインボイスの品質管理と考える
会社として登録番号のチェックルールを決めるべきもう一つの理由は、この問題を
「受け入れたインボイスの品質管理」
と捉えるべきだからです。
経理処理の中に、いかにして「偽インボイス=不良品」を紛れ込まないようにするか。
製造業であれば、仕入れた部品を受け入れる際に品質チェックをしているケースが多いでしょう。
このときに、量産部品と高額なカスタム部品で同じ受け入れ検査はしないはず。
すべての部品を全数検査すれば不良品が製造工程に入って来ることはありませんが、工数・コスト的にそのような対応はできません。
インボイスの登録番号チェックも同じであり、経理処理という工程に間違ったインボイスが混入しないよう、精度と手間のバランスを考慮しながら受入のためのルールを決めていくべきものです。
チェックルールを決める際には
- 誰がチェックするか
- どのインボイスをチェックするか
- どのタイミング(取引開始前、請求書受取時、経理処理時など)でチェックするか
- どのようにチェックするか(国税庁サイトでチェック、チェック後スタンプ押印など)
といった項目を決めておくべきでしょう。
これらの具体的内容については、自社の状況に適した方法を検討いただく必要があります。
「リスク」と「コスト」を天秤にかけて、ここまでなら許容できる範囲を見つけておく。
登録番号のチェックについては、あまり大きく取り上げられることはありませんが、上記のような視点で制度開始前に一度検討されることをお勧めします。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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