効率化が求められる現代において、情報のインプットを急ぐあまり、アウトプットの質や相手への配慮が疎かになっていないかを見つめ直す必要があります。

動画を使った情報収集は倍速がキホン?

みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。

最近、仕事に関する知識の習得や最新情報のキャッチアップに、YouTubeなどの動画コンテンツを活用することが当たり前になりました。

税制改正の解説やITツールの使い方など、視覚と聴覚の両方で学べる動画は非常に効率的です。

その「効率」を追い求めるにあたり、動画を視聴する際は、ほぼ「2倍速」が基本です。

たまに等速で再生してみると、話し方が妙にのんびり感じられてしまい、最後まで見ていられなくなることすらあります。

さらに最近では、動画を見る時間すら惜しいと感じることも増えました。

GoogleのAIツール「NotebookLM」などに動画のソースを読み込ませ、生成されたサマリー(要約)だけに目を通す。そんな情報の「つまみ食い」のような方法も使うことがあります。

「少し焦りすぎではないか?」と自分でも感じることはありますが、情報過多の現代においては、こうしたタイパ(タイムパフォーマンス)重視の情報収集は、一般的な光景なのではないでしょうか。

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話す相手が倍速で理解しているとは限らない

ところが、ふと立ち止まって考えてみると、この「倍速再生」の習慣が、リアルな場での対人コミュニケーションに影響を及ぼしているのではないか、と危機感を抱く瞬間があります。

「早く、端的に話すこと」が相手にとってのメリットであり、親切である。そんな勘違いをしていないだろうか、と自問自答することが増えました。

もちろん、結論から述べることや、無駄を省いた説明は仕事をする上で重要です。

しかし、情報のインプットと、人との対話は根本的に異なります。特に税理士という仕事においては、その差が顕著に現れます。

たとえば、経営数字に関する打ち合わせ。

損益分岐点の話や、資金繰りのシミュレーション、あるいは税金に関する法的な解釈など。これらは、動画を流し聞きするのとはわけが違います。

中には動画の倍速再生に慣れていて、どんな速い説明でも理解できる超人的なクライアントも稀にいらっしゃるかもしれませんが、基本的にはそうではありません。

経営数字や税金の話は、一つ一つの内容を丁寧に説明し、その裏側にある背景を共有しながら進めるべきものです。

そこを動画の2倍速のようなスピードでまくし立ててしまえば、相手の理解が追いつかなくなるのは当然です。

「相手が理解できていなければ、それは話をしていないのと同じである」

この当たり前の事実に、改めて向き合う必要があります。

動画は自分のペースで倍速にできますが、対話は相手のペースに合わせるべきでしょう。

最近では、意識的に「0.7倍速」くらいの感覚で話すのが、相手に安心感を与え、結果として深い理解に繋がるのではないかと考えるようになりました。

ゆっくり話すことで生まれる「間」こそ、相手が思考を整理するための貴重な時間になるのではないでしょうか。

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無意識のうちに影響を受けていることは意外と多い?

実は今回、このように自分の話し方を省みるようになったのにはきっかけがあります。

ある方から、

「少し話し方が早いのではないですか?」
「たたみかけるような話し方になっていませんか?」

と、率直な指摘を受けたのです。

自分では効率的に、テキパキと仕事をこなしているつもりでした。

しかし、その「効率」を求める無意識の行動が、知らないうちに自分の話し方や雰囲気を余裕のないものに変えてしまっていたようです。

私たちは、無意識のうちに普段の習慣から大きな影響を受けています。

毎日スマホで短い動画を視聴し、倍速で情報を詰め込んでいる。

そのリズムが、知らず知らずのうちに自分の「話をするテンポ」にまで染み付いてしまっているのかもしれません。

今回の気づきを通して感じたのは、「自分のやっていることは正しい」という思い込みの危うさです。

「タイパ重視」は情報収集の技術としては優れていますが、それをそのまま人間関係や相談などの場に持ち込むのは間違いでした。

道具や習慣は使い分けるものです。 情報を詰め込むときは2倍速でもいい。けれど、大切な誰かに何かを伝えるときは、あえてゆっくりと、0.7倍速の意識で言葉を紡ぎたい。そんな風に考えています。

皆さんも、もし「最近、少し急ぎすぎているかな」と感じることがあれば、一度自分の話し方のテンポを意識してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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