経営数字について検討する際に、「もし単価が10%上がったら?」「もし販売数が5%減ったら?」といった変化を、直感的に把握したいと思ったことはありませんか。こうしたことをイメージとして把握できると、経営者の次の行動につながるというお話です。

図解はわかりやすいが、「変化」を伝えにくいジレンマ

みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。

顧問先の経営者の方とお話しする際、会社の利益がどのような構造になっているかをご説明する機会が多くあります。

その際、いわゆる「未来会計図」や「MQ会計図」、あるいは「ストラック図」など呼び方はいろいろありますが、そうした図解を用いることがあります。

試算表や決算書の数字をただ眺めるよりも、売上や費用、利益の関係性がブロック図などで視覚的に示されることで

「なるほど、うちはこういう構造で利益が出ているのか」

と、直感的に理解しやすくなるからです。

文章や数字の羅列だけでは伝わりにくいことも、図にすることでスッと頭に入ってくる。これは、多くの方が感じられることではないでしょうか。

しかし、この便利な図解にも、一つ悩ましい点があります。

それは、「もし、こうだったら」という未来のシミュレーション、つまり「変化」をその場でパッとお見せするのが難しい、ということです。

例えば、今期の数字について改善策を検討する際に

「もし客単価をあと500円上げることができれば、利益はこれくらい増えますよ」

とか

「もし原材料費が10%上がってしまったら、これだけ利益が圧迫されます」

といったお話をします。

もちろん、口頭でご説明したり、図の上に新しい数字を書き込んだりすることはできます。

ですが、聞いている側としては、なかなかリアルなイメージとして捉えにくいのが正直なところではないでしょうか。

頭の中で数字を追いかけても、それが最終的に利益にどうインパクトを与えるのか、ピンとこないのです。

Excelが得意な方であれば、数値を入力すれば瞬時にグラフが変動するような、シミュレーションツールを作成できるのでしょう。

残念ながら、私にはそこまでのスキルはありませんので

「もっと手軽に、『変化』を可視化できる良い方法はないものか…」

と、常々考えていました。

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ないのであれば、とりあえず自分で作ってみる

「適当なツールが見当たらないのなら、自分で作ってみよう」ということで、Geminiに相談してみることにしました。

最初はGoogleスプレッドシートで作ってもらおうと思い

「ストラック図をGoogleスプレッドシートで作成して。スプレッドシート内の数字を変更すると、それに伴ってストラック図も変わるように作成して。」

といったフワッとした指示からスタート。

しかしながら、案として出てきたものがこれ。

しかも自分でスプレッドシートに式などを入力して作成するよう言われたので、方針を転換してWeb上で動くものを作ることにしました。

Geminiに壁打ち相手になってもらいながら、試行錯誤の末に一応それなりのものができました。

Web上で

  • 売上単価
  • 売上数量
  • 変動費単価
  • 固定費

といった基本的な数値を入力すると、未来会計図のような図が表示されるというものです。

で、今回は「変化」をイメージしてもらうことがポイントでしたので

  • 変更前の数字をボタンを押して保存
  • 変更後の数字を入力する

という手順で操作すると、上段に変更前の図・下段に変更後の図を表示するように作成しました。

正直、作り始めるまでは、どこまでできるか半信半疑でしたが、完成してみると意外と実用的なものになったのではないかと。

せっかくなので、このブログを読んでくださっている皆さまにもお試しいただけるよう、一時的に公開しておきます。よければ試してみてください(別サイトで開きます)。

加藤博己税理士事務所:利益比較シミュレーション

これがあれば、「今よりも単価を10%上げれば、利益がこれくらい増える」「もし販売数量が5%落ち込むと、利益はこれくらい減ってしまう」といった内容を、経営者の方とイメージを共有しながら、会話を進めることができます。

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「もしも」が自分事になると行動につながる

この自作ツールを使ってみて、改めて感じたこと。

それは、経営の「もしも」を直感的に、そしてリアルにイメージできることの重要性です。

「売上が10%落ち込むと赤字に転落する」
「経費をあと5%削減できれば、目標利益を達成できる」

単に言葉として聞くのではなく、目の前の図が変化するのを目の当たりにすると、その数字が持つ意味の重みがまったく違って感じられます。

どこか他人事のような印象だったものが、視覚的なインパクトをもって示されると、その数字が途端に「自分事」として、強いリアリティを持って迫ってきます。

そして、リアルなイメージを持つことができれば、具体的な行動を考え始めます。

「赤字転落を避けるために、どんな手を打てるだろうか?」
「この黒字目標を達成するために、単価アップと数量アップ、どちらを優先して取り組むべきか?」

具体的なイメージが湧くからこそ、次の一手、つまり具体的な行動へとつながっていく。

専門家として、ただ過去の数字を整理して報告するだけでなく、それが未来にどう繋がりうるのか、その可能性をいかにリアルに伝えられるか。伝え方ってやはり大事だと思います。

皆さんも、ご自身のビジネスの「もしも」を、一度可視化してみてはいかがでしょうか。次の一手につながる新しい発見があるはずです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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