健康と経営、一見すると異なる分野ですが、どちらにおいても「予防」が重要です。そのためにも体や会社の状態を把握することが不可欠、という点について確認をしておきましょう。

喉が渇いてから水分補給では遅い?

最近の京都は本当に暑い日が続きます。夕方に少し散歩するだけでも、じわじわと体力を奪われ、あっという間にへとへとに。

ニュースなどでは気象予報士の方が、熱中症対策として

「喉が渇く前に水分補給を!」

といったことを訴えていますが、私も散歩しているときに実感として感じます。

喉が渇いたと感じる前に水分補給をせずに、無理に歩き続けた後には、どっと疲れが出てしまい、その後なかなか体調が戻りません。

健康管理という観点では、水分補給はもちろんのこと、健康診断や予防接種といった

「悪化する前に見つける」
「感染しても症状を抑える」

といった予防策が非常に重要です。

日々の食事や睡眠といった基本的な生活習慣ももちろん大切ですが、それだけでは防ぎきれないリスクもあります。

健康を大きく損なうことなく生活するためにも、手遅れになる前に手を打つことが大事です。

こうした考え方は、会社経営にも当てはまります。

日頃から会社の状態をチェックし、問題の兆候があればすぐに対処する。このような視点は欠かせないものです。

※健康管理については一税理士の感想レベルの話なので、心配な点がある方は早めに専門家に相談してください。

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会社も「早期発見・早期治療」で対処する

もし会社の売上や利益が落ち込み、資金が急速に減少しているにもかかわらず、その状況を放置してしまったらどうなるでしょうか?

「もう少し様子を見よう」
「今は忙しいから後回しにしよう」

と考えているうちに、問題はますます深刻になります。

金融機関への相談が遅れてしまい、いざという時につなぎ融資すら受けられないとなると、資金の不足は最悪の場合、倒産という結果にもなりかねません。

このような状況に陥ってからでは、打てる手も限られてしまい、多大な労力とコストを費やしても回復が難しいケースも少なくないでしょう。

こうした状況を防ぐためにも、悪化する前の「予防」が欠かせません。そして予防のためには、まず会社の状況をきちんと把握する必要があります。

会社にとっての健康診断のような役割を果たすものとして、定期的な「月次決算」があります。

損益計算書や貸借対照表だけでなく、その他視覚化して状況をわかりやすくする資料を使って、毎月あるいは四半期ごとにしっかりと確認します。

会社の現状を数値で正確に把握できれば、どこに問題があるのか、どこを改善すべきなのかが見えてきます。

例えば、売上は伸びているのに利益が圧迫されている場合は、仕入原価や経費に問題があるのかもしれません。

逆に、利益は出ているのにキャッシュが減っている場合は、売掛金の回収が滞っているといった可能性も考えられます。

さらに大事なのは、その数字を見て「悪いところがある」と判断したら、すぐに対処することです。

健康診断で悪いところがあるとわかったのに、その後治療せずに放置していては意味がありません。改善に向けたアクションを起こすのは、体調が悪ければ病院に行って薬を飲むのと同じです。

他にも

「今は大丈夫そうだけど、将来のために事前に対処しておこう」

という対策は、まさに予防接種のようなものです。

例えば、今後の業界全体の動向を注視し、新たな技術の導入や市場開拓、事業の多角化を検討するといったことも、将来のリスクを低減するための予防策といえるでしょう。

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すべての経営アクションの起点は実態確認

「予防」が大事といいましたが、やみくもにいろんな予防を行うことは、時間的にもコスト的にも無理があります。

何を予防するか決めるためにも、その起点となるのは会社の実態を把握することです。売上・費用・利益・資金・在庫などの数字が、会社の「健康状態」を映し出します。

思い込みや感覚的な判断だけで経営を進めてしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。

会社の状態を「定期的に」「数字で」把握することで、実態を正確に把握し、問題が見つかれば放置せずに対処する。

言葉で書けばこれだけのことですが、実際に実行に移すのは意外とカンタンではありません。

だからこそ、まず最初の一歩である「実態把握」がきちんとできているか、改めて確認してみてはいかがでしょうか。

実態がわからないままだと、その後のステップに進むこともできません。すべての行動の起点となる実態確認について、問題がないか点検することをオススメします。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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