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すべての事業者にとって避けられないものとして「資金繰り」があります。今回は、事業者ごとにどのように資金繰りを管理すべきか考えてみましょう。

資金繰りは日別に確認しないと間違える

「資金繰り」という言葉を聞いたときに思い浮かべるイメージは千差万別だと思います。

今回は資金繰りの「実績」ではなく「見通し」について検討してみましょう。

資金繰りの見通しについてはどこにもデータはありませんので、過去の実績等を確認しながら自分で検討する必要があります。

こうした検討を行う際にまず知っておきたいのは、資金繰りは日別に確認しないと間違える可能性があるという点です。

世の中に出回っている資金繰り表のフォーマットは「月別」になっているものが多いのですが、これでは不十分なケースがあります。

どういうことかといいますと、月末時点では預金残高が十分にあるとしても、日々の残高においてマイナスになっては困るということです。

当座借越を利用できるケースなどを除けば預金残高がマイナスになることはあり得ません。

資金繰りの見通しにおいて残高がマイナスになるということは、その日に払うべき支払いができないことを意味します。

期日までに支払いができないと取引上問題が生じますし、もしその決済が手形の場合はさらに大きな問題となります。

このような状況になることがわかった場合は、事前に

  • 銀行からお金を借りる
  • 売掛金の回収を前倒ししてもらう
  • 支払期日を延ばしてもらうよう交渉する

などの対応を行う必要が生じます。

資金繰りが厳しい会社の場合、日別どころかさらに細かい対応が必要となるケースもあります。

支払期日の日に回収予定の金額がある場合、午前中に入金があったことを確認してから午後に支払い処理を行うといった状況です。

このように資金繰りを管理する上では、日別に管理しておかないと支払い当日になって

「お金が足りない!」

という事態になってしまう可能性があるわけです。

すべての事業者が日別の資金繰りを行うべきか?

ここまでの内容を読んで

「ウチはそんなことやってないけど、特に問題も起きてないよ」

という方もいるでしょう。

実を言うと私も日別の資金繰り表は作成していません。

ではどうやってお金の管理をしているかというと、この本に紹介されている方法を使っています。

PROFIT FIRST お金を増やす技術――借金が減り、キャッシュリッチな会社に変わる

ザックリと内容を説明すると

  1. 過去の実績などを元に各支出項目の収入に対する比率を決める(例えば、経費:30%、税金:20%、給料:30%など)
  2. 月初に前月の回収金額に対して1の比率を掛けた金額をそれぞれ別の預金口座に移す
  3. それぞれの預金口座の残高の範囲内で支出をコントロールする

という方法です。

預金口座については異なる銀行を使うと振込手数料がかかりますので、ネット銀行が提供する目的別に仮想口座をつくれる機能を利用しています。

この預金口座の残高を毎朝チェックすることで、日別の資金繰りの代わりとしているわけです。

この方法で管理した場合、収入が減ると経費として使えるお金の残高は当然減っていきます。残高が減って来た場合には、早めに経費の支出を抑えるなどの対応を取ることになります。

よく「お金に色はついてない」と言います。目の前にお金があっても、それが何のためのお金かはわかりません。

そこで口座を分けることにより「何のためのお金か」という点を明確にするという方法で資金繰り管理を行っています。

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事業の状況に合わせた資金繰りの管理方法を見つける

先ほどご紹介した方法でも、気をつけないと残高が不足する可能性はもちろんあります。毎月の概算の支払額を把握しておいて、その残高を下回らないような配慮は別途必要です。

資金残高が十分にある会社については、日別の資金繰りにあまり手間をかける必要はないかもしれませんし、日別の資金繰りを行っていない会社はこうしたケースが多いと思われます。

資金繰りのやり方については、唯一の正解はありません。事業内容や資金の状況など、それぞれの事業者に合ったやり方で管理をすべきものです。

ただしそうはいっても「定期的に確認する」という点は、どんな事業者であっても欠かせないでしょう。

また少なくとも

「これくらい残高があれば問題ない」

とパッと見てわかる管理方法を見つけておけば最低限の安心は得られます。

資金繰りも一つの習慣です。時間をかけずに管理できる方法を見つけて定期的にチェックするようにしましょう。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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