税理士変更を検討する方の中には、「税理士を変えることで逆にデメリットが生じるのでは?」と不安に感じている方もいるようです。今回は税理士の視点から、税理士変更により生じうるデメリットについて検討してみたいと思います。

検索ワードを眺めていたら・・・

今回のブログタイトルの元ネタですが、先日事務所ホームページへの流入元データを眺めていたときに、ふと目に留まった

「税理士を変えるデメリット」

という検索ワードです。

このワードを見たとき「そういうことを心配する人もいるんだな」と。

イメージとしては

「税理士を変えたいけれど、変えてしまうと今よりも大変な状況になってしまうんじゃないか」
「税理士を変更したことで、記帳や申告がうまくいかなくなったらどうしようか」

といった感じの悩みでしょうか。

税理士の立場からすると、ご依頼があればいい加減な対応をするつもりはありませんので、変更自体にデメリットがあるという視点は、これまであまり意識していませんでした。

そこで今回は、税理士を変更することで実際に起こりうるデメリットと、そうしたデメリットを回避するための対策について、私の経験も踏まえてお話したいと思います。

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税理士を変更したらどんなデメリットがあるか

実際に税理士を変更した場合、どのようなデメリットが考えられるでしょうか。主なものとして2点あります。

新しい税理士に関連する内容をすべて説明する必要がある

まず、新しい税理士に業務を依頼する場合、当然ながら会社の状況やこれまでの経緯を一から説明する必要があります。

前任の税理士から新しい税理士への引継ぎは、顧問契約の内容に含まれていないことが一般的です。

そのため

  • 会社の設立からの流れ
  • 事業内容の詳細
  • 会計処理のルール
  • 税務申告の状況
  • これまで税理士とどのようなやり取りをしてきたか

など、多岐にわたる情報を改めて提供しなければなりません。

こうした説明や情報提供は、意外と時間と手間がかかるものです。

前任の税理士とのコミュニケーションが円滑でなかった場合、必要な情報がスムーズに引き継げないというリスクも考えられます。

なお、上記の内容を会社側が説明できればいいのですが

「経理はすべて税理士に丸投げしていたので、よくわからない」

というケースも散見されます。

こうした場合は、過去の状況を整理するために、依頼者・税理士ともに想定以上の負担がかかります。

この点への対策としては、税理士を変更したい場合に、自社の経理状況をきちんと把握できているか、事前に確認しておくべきでしょう。

従来とやり方や対応方法が変わることへの負担・不満

税理士事務所によって、業務の進め方や提供するサービスの内容は大きく異なります。

そのため、新しい税理士に変わることで、これまで当たり前だったことが変わる可能性があります。

例えば

  • 会計ソフトの利用方法や種類
  • 書類の提出方法や頻度
  • 試算表や決算書のフォーマット
  • 税務に関する説明の仕方やタイミング
  • 質問への回答方法やレスポンスの速さ

などが挙げられます。

他にも

「今まで電話で連絡していたが、チャットしかダメっていわれた」

といった、コミュニケーションのやり方の違いもあるでしょう。

税理士を変更する場合、最も心配なのは

「新しい税理士が本当に自社に合うのかどうか」

のはず。

現状に不満があって変更を検討しているにもかかわらず、新しい税理士が期待外れだった場合、状況がさらに悪化するリスクも否定できません。

こうした点については、契約前に面談等で話をする機会があると思いますので、そのときにきちんと確認しておくべきです。

税理士に不満があって変更したのに、変更したらさらに不満が増えたではまったく意味がありません。

この点について大事なのは自分が求めているのはどういったサービスか、事前に明確にしておくことでしょう。

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失敗したくない場合の対処法

上記以外に料金について心配される方がいるかもしれません。

この点については、上がることもあれば下がることもあるため、私はデメリットとは考えていません。

料金に納得がいかないのであれば、そもそも契約を結ばなければよいだけの話です。

しかし、「税理士を変えるデメリット」というキーワードで検索する背景には、恐らく現状の税理士に対して何らかの不満があるのでしょう。

もしそうであれば、「ストレスを抱えながら今の税理士に依頼し続ける」こと自体が、会社にとって大きなデメリットと言えるかもしれません。

結局のところ、税理士の変更は、今回解説したようなデメリットよりも、メリットの方が大きいと判断した場合に検討すべきです。

ただ、いきなりよく知らない税理士に依頼すること自体がリスク、という考え方があるもの事実です。

こうした場合は、例えば単発相談とかセカンドオピニオンから始めて、税理士が自社に合っているか見極めるというのもひとつの方法と考えます。

いろいろと書きましたが、きちんと満足いく対応をしておかないと、私もこんな風に変更を検討される対象となり得るわけですから、その点は襟を正さないといけないかなと。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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