クラウド会計を実務で使い始めていますが、実際に使ってみると事前の検討とは異なりいろいろと細かい点が気になってきます。
今回はMFクラウド会計・確定申告について少し実務寄りの細かい点も含めて、現時点で気になる点を整理しておきたいと思います。
1.銀行データ(CSVファイル)のインポートが重複する
法人の場合、インターネットバンキングが電子証明書対応となっていることが多く、その場合MFクラウド会計で直接銀行の取引データを取込むことができません。
月額2,980円のベーシックプランであれば電子証明書連携ソフトが提供されており、半自動で取込めるようですが(この点いまだ試したことがないので使用感がわかりません)、月額1,980円のライトプランを使っている場合には、インターネットバンキングにログインして取引明細をCSVファイルとしてダウンロードした上で、
「自動で仕訳」-「連携サービスから入力」-「インポート」-「銀行・カード等のサイトからダウンロードした取引明細」
というメニューからインポートする必要があります。
このインポートの際の課題としては、
・前回インポートしたデータと重複するデータがある場合、重複する部分は自動的に除外されない
・CSVデータの各項目の割当(日付・金額)を毎回行う必要がある
という2点が挙げられます。
同じ金融機関のCSVファイルをインポートするわけですから、ファイルの書式及びインポート履歴を保持しておいて、重複データがあっても前回データの続きからインポートするように改良してもらいたいと思います。
2.自動仕訳ルール適用時に不要な行を削除するのが面倒
これはどういうことかといいますと、弥生会計でいえば入力途中に仕訳の特定の行を削除する場合「行削除」という機能を使うと思いますが、この「行削除」の機能に該当するものがないということです。
自動仕訳ルールなので不要な行が出てくることは頻繁にはないのですが、複合ルールを設定している場合まれに不要な行が発生することがあります。
(例えば売掛金回収時に振込手数料を控除してくる相手先がたまたま控除してこなかった場合など)
このようなケースでは、削除したい行について勘定科目を「未選択」に変更し、かつ金額を0にしてから登録しなければならず少し面倒です。
この点についても各仕訳行に「×」マークが表示されていて、それを押せばその仕訳行を削除できるといった機能を追加してもらいたいです。
3.データバックアップ機能がない
クラウドといわれるサービスを扱う会社は、「弊社のサービスは何重にもバックアップがされていますので、お預かりしたデータが消失することはありません。だから安心して使って下さい。」というスタンスが根底にあります。
そのため、ユーザー自身がバックアップをとるという点があまり考慮されていません。
しかしながら、税理士という立場から考えた場合、クラウド会計ではお客様とオリジナルのデータベースを共有しているため、設定内容(勘定科目、自動仕訳ルールなど)や税理士が修正した仕訳データそのものをお客様が誤って変更してしまうリスクがあります。
(もちろん税理士が操作を誤ってデータを変更してしまうリスクもありますが・・・)
会計ソフトが税理士側で完結している場合(いわゆる記帳代行のケース)や従来の自計化対応の会計ソフトであればこのような課題は無かったのですが、クラウド会計においてはリスクの一つとして認識しておく必要があります。
この課題への対策としては、「税理士側で定期的にバックアップをとっておくこと」が現時点での現実的な解決策なのですが、MFクラウドでは設定内容のバックアップをとることができません。
仕訳データについては、仕訳日記帳をCSVファイルで保存しておくことによりバックアップは取れるのですが、カスタマイズした設定内容についてもバックアップが取れる機能の実装を希望します。
【2016/10/26 21:57追記】
MFクラウドでは、勘定科目や自動仕訳ルールなどのバックアップをそれぞれ個別に取ることは可能です。
しかしながら、設定内容のバックアップを毎回個別に取るのは現実的ではないため、そうしたバックアップをまとめて取れるようにしてほしい、というのがここで書きたかった趣旨です。
私の勘違いもあり誤解を招く文章となっておりましたので追記いたします。
4.その他
上記外にも次のような課題があります。
・税理士からお客様を招待できない
ITに不慣れなお客様については税理士側で環境を準備した上で、お客様をそこに招待して使っていただくという風にしたいケースがあるのですが、MFクラウドではお客様が最初にアカウントを作成して税理士を招待するという方法しか採れないようになっています。
・仕訳承認機能が無い
いわゆるワークフローと呼ばれる機能はMFクラウド会計には実装されていません。
(MFクラウド経費にはこうした機能はあるようです。)
経理担当が複数いる会社では起票する人と承認する人が別れているケースも当然ありますが、現状ではこうした組織に対応した使い方はできません。
とりあえず現状で気になる点をまとめてみました。
いろいろと課題はありますが、従来のソフトに比べると改善スピードが遙かに速いという点もクラウド会計の特長の一つですから、状況は次第に改善していくと期待しています。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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