AIによる文字おこし技術は日々進化していますが、一言一句の正確性はあまり高いとはいえません。 打ち合わせの振り返りにおいて、ツールをどのように使い分ければ効率化と安心感を両立できるのか、私の実践例をご紹介します。
AIによる文字おこしサービスは使えない?
みなさん、こんにちは。京都の税理士、加藤博己です。
ここ数年で、AIを活用した文字おこしサービスが本当に増えました。
かつては文字おこしをしたい場合は、ICレコーダーで録音した音声を、自分の手で時間をかけてタイピングしたり、専門の業者さんに依頼したりするのが当たり前でしたが、今では録音や録画するだけでテキスト化できます。
私も例に漏れず、日々の業務や打ち合わせでこれらのツールを積極的に導入しています。
ただ、実際に使ってみた個人的な感想を正直に言えば、文字おこしの結果そのものは、あとから読み返しても「???」となってしまうケースが少なくありません。
例えば、オンライン会議でよく使う「Google Meet」の文字おこし機能。これは日本語の認識精度も高く、比較的マシな部類だと感じています。
一方で、「Notta」というサービスも使っていて、非常に多機能で便利なのですが、文字おこししたものを後から見ると、「一体、何のことを言っているんだろう?」と首をかしげるようなものも珍しくありません。
これをそのまま「議事録」として誰かに提出できるかと言われれば、答えは「NO」です。
結局、人間が修正を入れる手間を考えたら、「AIなんてまだ使えないな」と感じてしまう方がいるのも頷けます。
モレがないか、自分の理解のチェックに活用する
では、私がなぜ「使えない」部分がありながらも、これらのサービスを使い続けているのか。
それは、文字おこしの精度そのものよりも、付随する「AI要約機能」に大きな価値を感じているからです。
ここがテクノロジーの不思議なところで、個々の文を細かく見れば誤字脱字だらけでイマイチな精度であっても、その全体をAIに要約させると、驚くほど正確で要点を得た内容に仕上がります。
断片的な情報の集合体から、文脈を読み取って「結局、何が決まったのか」を抽出する能力は、目を見張るものがあります。
私は、こうしたツールを使って完璧な議事録を作ろうとは考えていません。では、どのように活用しているのか。
それは、打ち合わせが終わった直後やその日の終わりに、AIが生成した要約を「サラッと眺める」だけです。
なぜ眺めるのか? 目的はただ一つ。
「打ち合わせに基づいて、次に行うべきアクションや、検討すべき項目にモレがないか」を、自分の記憶やメモと照らし合わせてチェックするためです。
「あ、そうだ。この件についても資料が必要だと言っていたな」
「この内容、メモし忘れていたけれどAIの要約には入っているな」
という具合に、自分の理解のモレを補完するものとして使っています。
自分一人で集中して話を聞いているつもりでも、人間の集中力には限界がありますし、無意識に自分にとって都合の良い情報だけを拾ってしまうこともあります。
そこに「客観的な第3の目(AI)」を通すことで、安心感が格段に増すのです。
「カンペキじゃないから使わない」はもったいない
新しいツールやサービスを導入する際、「100%完璧にこなしてくれないと意味がない」と考えてしまう気持ちは、よくわかります。
特に私たち税理士のような仕事は、正確性が何よりも求められますから、中途半端なアウトプットを出すツールに対して、つい厳しい目を向けてしまいがちです。
私だって、可能であればAIが完璧に一言一句を文字におこしてくれた方がよいと考えています。
しかし、その「100%」を待って、今の便利な機能を使わないのは、非常にもったいないことではないでしょうか。
人間の能力には限界があります。どんなに気をつけていても、大事な場面でメモを取り忘れたり、後から思い出そうとしてもどうしても記憶が抜け落ちてしまったりすることは、誰にでもあることです。
それを責めても仕方がありませんし、テクノロジーでカバーできるのであれば活用しない手はありません。
「完璧な議事録作成マシン」としてではなく、「聞き漏らしを防ぐバックアップ」として捉えれば、今のAIツールはすでに十分すぎるほどの実力を持っています。
100点満点を求めず、自分の弱点を補ってくれる「ちょっと優秀なアシスタント」くらいの感覚で接してみる。
すると、仕事のモレが減り、結果としてお客様に提供するサービスの質も安定していく。
ツールに使われるのではなく、ツールの「得意なところ」だけをうまく摘み取って、自分の仕事を楽にする。
そんな考え方で、ツールの使い方を検討してみてはいかがでしょうか。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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