この時期は個人の確定申告のピークですが、すんなり終わる人とそうでない人はハッキリとわかれるものです。これは「事前準備」の違いから生じるんですよ、というお話を今回はしたいと思います。
確定申告、早く終わる人となかなか終わらない人
3月に入り、個人の確定申告もピークの時期ですが、少しずつ終わりが見えてきたかなという感じです。
当事務所でもいろんなお客さまの確定申告を行っていますが、早く終わる人とそうでない人に分かれますね。
その理由を考えたときに、「事前準備」とか「段取り」という言葉が頭に浮かびます。
税理士事務所ができる「事前準備」として
- 必要な資料の案内を早めに出す
- 締め切りを設定することでペースメーカーになる
- 内部のチェックリストを毎年更新してモレがないようにする
などの工夫は当然行うわけです。
こうした対応に対して、期限を守って出してくる人とそうでない人に、まずわかれます。
では、期限通り出してくる人だと早く終わるかというと、実はそうとは限りません。
期限までに資料を提出してもらっても、資料にモレがあったり、きちんと整理されていないと、内容確認のためのキャッチボールが延々と続くことになり、なかなか終わらないことも。
ここまでの時点で
- 期限までに提出できるよう資料を揃えるなどの準備をしているか
- 整理した状態で提出できるよう普段から準備しているか
という「資料整理」の事前準備に違いがあります。
「資料の整理」には「取引の整理」が欠かせない
「資料整理」という言葉でまとめましたが、実際にはその中身にはいろいろあります。
一般的には受け取ったレシートなどをきちんと一カ所にまとめている、といったイメージかと思いますが、それ以上に大事なのはそもそも資料を整理しやすいように「取引の整理」を行っているかどうかです。
一例としては、支払いは現金を使わず、銀行振込やクレジットカードに集約するといったことが挙げられます。
レシートの整理が苦手という人が、支払いを現金で行うと、中途半端な整理しかできずに
「レシート出すの忘れてました。今からでも間に合いますか?」
という、この時期の税理士を殺気立たせるお願いをすることになってしまいます。
モレが無いようにするためには、事前にモレに気付く仕組みが必要です。
すべての取引が銀行振込で支払いされていれば、通帳を確認すればすべて把握できますし、どうしても振込できない場合にはクレジットカードで決済すれば、毎月のカード明細で取引の把握が可能です。
どうしても現金で払わざるを得ないものは出てくると思いますが、そうした場合は現金で払ったレシートだけわけておけば、モレやダブりを避けやすくなります。
支払い方法ごとにレシートをわけておくのが理想ですが、そのためにも支払い方法はできる限り減らすという取引の整理が欠かせません。
こうしたことは確定申告の時期になってからでは何もできません。
確定申告が終わったら次に向けてすぐに取りかかるべきもの。だからこそ事前準備が大事です。
「○○しちゃったんだけど、税金安くならない?」は手遅れ
ここまで「資料整理」と「取引の整理」という観点で、事前準備についてまとめましたが、税金の計算という意味ではもう一つ事前準備があります。
それは、どのように取引を行うか事前に検討しておくことです。
ここまでの話と少し毛色は変わりますが、例えば何か取引を行った後で
「税金安くなりませんか?」
と言われてもほとんどのケースではどうしようもありません。
例えば、家を売ったけれども、空き家特例を適用したいというケース。
売却した建物が要件を満たしていても、家を取り壊すか耐震基準を満たすリフォームをしてから売らないと使えません。
今はリフォームなどを買い手が行うことも認められていますが、当然買い手との事前交渉は必要となります。
他にも、消費税の計算で簡易課税を使いたいというケースも同じです。
確定申告書を作る段階になって
「簡易課税の方がトクになるけれど適用できませんか?」
といわれても、事前に届出をしていなければどうしようもありません。
税金って事前に検討して対応しておかないと、どうしようもないことってたくさんあります。
何も検討せずに取引を行ってから
「なんとかして!」
と言われても、税理士であっても何もできないケースがほとんどです。
だからこそ、特に大きな取引を行う際には、税金に影響しないか事前に検討するという事前準備が欠かせません。
確定申告が早く終わるかどうかも税金の計算についても、確定申告書を作る段階でほぼ決まってしまっています。
だからこそ「事前準備で9割くらいは決まる」と思うわけです。
「今回は事前準備が甘かった」と感じる方は、来年に向けて「事前準備」を今から始めましょう。
投稿者

- 加藤博己税理士事務所 所長
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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