来年1月から振替納税の依頼書、ダイレクト納付のダイレクト納付利用届出書をオンラインで提出できるようになります。今回は振替納税の依頼書の提出を取り上げ、具体的に何が便利になるのか確認したいと思います。
振替納税とダイレクト納付
前回の記事で、税務の電子化について書きましたが、今回はその中で取り上げた振替依頼書のオンライン提出について、もう少し具体的に確認してみましょう。
税金を金融機関に行かずに支払える方法として、
- 振替納税
- ダイレクト納付
- クレジットカード納付
があります。
(バーコードを使ったコンビニ納付もありますが、これはコンビニまで行く必要がありますので、除外しています)
このうち、クレジットカード納付は事前の手続は必要ありませんが、あとの2つについては、税務署に書類を提出しないと使うことができません。
それぞれ詳細は、国税庁の以下のページにありますが、
[手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付
大きく違いをまとめると、
振替納税 | ダイレクト納付 | 備考 | |
---|---|---|---|
使えるのは? | 個人のみ | 個人・法人 | |
支払える税金は? | 所得税・消費税 | すべての税金 | ダイレクト納付は、国と地方それぞれ届出必要 |
支払日 | 事前に決まっている | 納付期限までであれば、自分で決められる | |
申告後の支払手続 | 不要 | 必要 |
振替納税 | 使えるのは? 個人のみ |
支払える税金は? 所得税・消費税 |
支払日:事前に決まっている | 申告後の支払手続:不要 | |
---|---|---|---|---|---|
ダイレクト納付 | 使えるのは? 個人・法人 |
支払える税金は? すべての税金 |
ダイレクト納付は、国と地方それぞれ届出必要 | 支払日: 納付期限までであれば、自分で決められる |
申告後の支払手続:必要 |
といったところかと。
なので、法人は選択の余地はありませんが、個人であれば、
- 支払日を自分で決めたいのであればダイレクト納付
- 申告後に、支払手続をするのが面倒であれば振替納税
といった感じになるでしょう。
今回は、このうち振替納税を始める際の手続について、来年1月以降オンライン提出が可能となることで、どのように便利になるか確認しておきたいと思います。
オンライン提出で便利になる点は?
振替納税を始める際に必要な依頼書は、従来銀行印等を押した書類を税務署に提出する必要がありました。
これが来年1月からオンラインでも提出できるようになります。
国税庁:振替依頼書及びダイレクト納付利用届出書(個人)のオンライン提出について
これにより、便利になる点としては、
- 書類を税務署まで持って行く必要がなくなる
- 銀行印を押す必要がなくなる
- ネットバンキング契約なしでも、自宅から振替納税を申込できる
といったことが挙げられます。
なんといっても、大きいのが1と2でしょう。
書類を印刷して、銀行印を押して、税務署に持って行くという手間がなくなります。
国税庁の振替納税の案内には、
所轄する税務署又は振替依頼書に記載した金融機関へ提出してください
とありますが、以前お客様が金融機関に持って行ったところ、
「ここでは受け付けできないので税務署に持って行ってください」
と言われたこともありました。
このように金融機関により対応が異なる可能性があるのですが、オンライン提出であればこうしたトラブルも避けられます。
3については、オンライン提出に対応している金融機関が、次のリンク先に掲載されています。
ざっと見たところ、大手の銀行などはほぼカバーされています。
オンライン提出をするための条件としては
「普通預金口座を開設していて、キャッシュカードを持っている」
としているところが多く、ネットバンキングの契約はなくてもできそうです。
(実際には、制度の運用が始まってみないとわからない部分もありますが)
手順を確認してみると、以下のように、キャッシュカードの暗証番号や通帳に記帳された最終残高を入力することで、銀行印の代わりとなる本人確認を行うのでしょう。
そのため、恐らくネットバンキングの契約がなくても、振替依頼書のオンライン提出は可能と思われます。
なお、提出にはe-Taxの仕組みを使って行いますので、e-Taxを使うための利用者識別番号とパスワードは必要となりますので、この点はご注意ください。
手続き自体に時間をかけずにすむ方法を常に考える
振替納税の依頼書をオンラインで提出することにより、何が便利になるのか確認してみました。
パソコンやスマホの操作が苦手でなければ、書類の提出はオンラインで行った方がはるかにラクになります。
振替納税を使うことで、税金を支払うためにわざわざ金融機関に行くという手間を減らすことができます。
その一方で、振替納税を始めるための書類作成・提出に多くの時間をかけても、何もメリットはありません。
1時間かけて書類作成・提出しようが、10分で終わらせようが、そのあと得られる効果に違いはないわけです。
そうであれば、手続きにかかる時間は少しでも短い方がメリットは大きくなります。
「毎年わざわざ銀行まで税金の支払いに行っている」という方であれば、今年の所得税から振替納税などを検討されてはいかがでしょうか?
年明け以降に手続きすれば、わざわざ出かける必要もありません。
ぜひ一度検討してみていただければ。
投稿者
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大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。
40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。
中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。
現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。
さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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