前回税理士と面談するメリットについてまとめましたが、面談する際に数字がまとまっていないと何も話ができません。月次決算をまとめる際の注意点について考えてみましょう。

話をする前提としての「月次決算」

前回、税理士と定期的に面談することのメリットについてまとめましたが、この前提として経営数字がまとまっている必要があります。

数字の準備もなく面談しても、それこそ雑談だけで終わり

「こんなことに時間を使っても何のメリットもない!」

ということになってしまいます。

あくまで検討するための「月次決算」がまとまっていることが、前回お伝えした内容の前提となっているわけです。

記帳や数字のまとめに関しては

  • 自社で対応するケース
  • 税理士などに記帳代行で依頼するケース

それぞれあると思いますが、例えば

「数字をまとめるのにものすごく時間がかかる」
「経理の負担が大きいので、月次や四半期ごとにまとめるのはやりたくない」

といったことを感じることもあるのではないでしょうか。

そこで今回はこうした月次決算をまとめる際の注意点について、考えてみたいと思います。

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月次決算は「そこそこ」の精度でOK

結論からいえば、中小零細企業が月次決算をまとめるにあたっては、ある程度割り切りが大事だと考えています。

月次決算を行う目的はあくまで「現状を確認すること」です。

一般的に「管理会計」と呼ばれるものなので、仮に多少の間違いがあったとしても、外部に対して問題になることは基本的にありません(金融機関と毎月共有しているようなケースでは注意が必要ですが)。

確定申告書を作成する基礎となる年度決算に間違いがあると、税額が変わってしまうなどの影響がありますが、月次決算については

「一度まとめた数字から変わってはダメ」

という考え方をまずは捨てましょう。

こうした考え方ができると、取引先からの請求書が届かない、営業担当者が立替経費の精算をいつまでも持ってこない、など

「資料が揃わないから数字がまとまらない」

という状況にも対処する方法が見えてきます。

仕入などについて請求書が届くのが遅いのであれば、納品ベースである程度集計できていれば、その数字で概算計上する。

経費の精算遅れは(ルールが守られていないという点ではよくないですが)、一旦無視する。

こんな感じで割り切ることが可能となります。

正確な数字が2~3ヶ月してからまとまるよりも、ある程度の精度の数字が1ヶ月以内にまとまる方が、「現状を確認する」という目的に照らすとはるかによいのです。

大事なのは

  • 月次決算の数字については早くまとめるために割り切りが入っていること
  • 割り切り方の大まかな内容

について、会社の内部で事前に共有されていることです。

経営者がこの点を理解していないと

「なんで正確じゃない数字を持ってくるんだ!」

といった行き違いが生じてしまう可能性があります。

概算であっても数字が早くまとまる方が、経営判断に役立つことを理解してもらいましょう。

なお、月次決算を早くまとめようとすると、いろんな問題が出てくるのですが、そうした問題が普段の経理業務においてもネックになっている可能性があります。

概算で計上することも対処法のひとつですが、そうした課題をひとつずつ潰していくことで、経理業務自体の効率化につながる可能性があることも意識しておきましょう。

また経営者の立場からは「スピードと精度を両立できないのか?」といった要望があるかもしれませんが、これも求めすぎると気付かないうちに、内部コストが上がってしまう可能性があります。

何ごともバランスが大事、という点をご理解いただければと。

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数字をまとめる「目的」を理解する

月次決算には割り切りも大事という点についてまとめて見ました。

月次決算を行うのは

数字を早くまとめる → 経営上の課題を明確にする → 改善のためのアクションを行う

という流れで、会社の状況を改善するために必要だからです。

年度が終ってから月別の数字を眺めて

「会社の状況がよくない。なんとかしないと。」

と気付いても遅すぎます。

このように月次決算を行う「目的」が理解できれば、数字の精度とのバランスをどのようにとるべきかも見えてきます。

月次決算が負担に感じるのであれば

  • 割り切ることで負担を下げられる部分がないか
  • 経理業務のネックになっている部分がないか

といった点を見直してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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