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インボイス制度の開始まで1ヶ月半を切り、今から申請を行っても9月中に登録番号が通知されない可能性があります。そこで今回は登録番号が通知されるまでのインボイスの発行方法について確認しておきましょう。

今から申請しても登録番号がわかるのは1ヶ月後

この時期になると出てくる質問として

「インボイスの登録番号が9月末までに手元に届かない場合、10月のインボイス発行はどうすればいいか?」

というものがあります。

国税庁が公表している情報(2023年8月10日時点)では、インボイスの登録通知までにかかる期間は

  • 電子申告で申請した場合:約1ヶ月
  • 書面で申請した場合:約2.5ヶ月

とされています。

少し前までは、電子申告で約1.5ヶ月とされていましたが、登録申請が少し落ち着いてきたのか期間が短縮されています。

ただし1ヶ月での登録通知を保証するものではありませんので、今から電子申告で申請しても9月末までに通知が来ない可能性はあります。

法人は通知がなくても登録番号はわかりますが、登録が完了するまではインボイスに登録番号を書くことはできません。

個人事業者については、通知が来ないと登録番号はわかりませんので、通知が来るまでは要件を満たした形でインボイスを発行することができません。

そうなると10月以降登録番号がわかるまでの期間について、どのように対応すればよいのかという疑問が出てくることになります。

登録番号がわからない時点での対応方法

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登録番号がわからない時点でのインボイス発行方法

登録番号の通知までの対応方法について、つい最近国税庁から資料が公表されました。

インボイス制度の開始に向けて特にご留意いただきたい事項

この資料の2枚目に今回の疑問に対する回答が記載されています。

10月以降、登録番号の通知が来るまでの対処法として

  1. 事前にインボイスの交付が遅れる旨を先方に伝え、通知後にインボイスを交付する
  2. 通知を受けるまでは登録番号のない請求書等を交付し、通知後に改めてインボイスを交付し直す
  3. 通知後にすでに交付した請求書等との関連性を明らかにした上で、インボイスに不足する登録番号を書類やメール等でお知らせする

の3つの方法が挙げられています。

とはいえ、実務を考慮すると3が現実的な対応方法でしょう。

1の場合、待ってもらえるのであれば構わないですが、もし10月決算の会社だと通知まで待ってもらえないでしょう。

2の方法では、インボイスの通知が来たあとにわざわざ改めてインボイスを発行する手間が生じますし、受け取った側が勘違いしてダブって処理する恐れがあります。

そのため実際には3の方法を使うのが現実的といえます。

この場合、注意点として

「すでに交付した請求書等との関連性を明らかにした上で」

とありますが、通常インボイスとして使用する請求書等には発行した事業者の名称や住所が記入されています。

税務署から受け取った登録番号の通知書にも納税地と事業者の名称が記載されていますので、例えばこの通知書のコピーを渡して保存してもらえば元の請求書等との関連性について問題が生じることはないでしょう。

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あとから個別に連絡できない小売店などの対処法

今回の資料では、事後的に個別に登録番号を購入者に連絡するのが難しい小売店などの対応方法についても触れています。

具体的には

  • インボイスの交付が遅れる旨をHPや店頭に掲示
  • 登録番号通知後にHP等で「弊社の登録番号は『T1234…』となります。令和5年10月1日から令和5年●月●日(通知を受けた日)までの間のレシートをお持ちの方で仕入税額控除を行う方におきましては、当ページを
    印刷するなどの方法により、レシートと併せて保存してください」と掲示

といった方法で対応可能としています。

買手の取扱いはどうなる?

ここまでの話は売手としての対応についてです。

買手側の取扱いについては同じ資料の中に、登録番号のないインボイスを受領した場合に

  • その事業者がインボイス登録を受けることが確認できている
  • あとで正式なインボイスもしくは登録番号のお知らせをもらって保存する

という対応をとれば、登録番号のないインボイスをもとに仕入税額控除を行って消費税の申告書を作成してよい旨が明記されています。

なおもし仮に登録番号などを事後的にもらえなかった場合も、修正申告ではなく翌課税期間での仕入税額控除の減額で構わないとのことです。

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インボイスは「一つの書類」で完結しなくてもいい

今回は国税庁の公表資料を参考にインボイスの登録通知が間に合わない場合の対処法を確認しました。

インボイスの取扱いについては意外と柔軟に対応してくれますが、そのうちの一つが

「インボイスは一つの書類ではなく複数書類でもOK」

という点です。

この考え方があるため、今回のような対応も認められることとなります。

実際の税務調査の場面などにおいて

「インボイスとして不備がある」

と指摘されたとしても、他の書類で不備を補完できないか検討をしてください。

いろいろなところに関わってくる考え方となりますので、ぜひアタマの片隅に入れておいていただければと思います。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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