数年後に起きるかもしれないリスクについて、今すぐに危機感を持つのは誰にとっても難しいものです。どうすれば危機感を持って先手を打つための行動に移せるのか、そのための「伝え方」について考えてみましょう。

これから大きく変わる制度、電子帳簿保存法・インボイス

経理に関連する制度で、今後大きな変化をもたらす可能性が高いものとして

  • 電子帳簿保存法の改正(2022年1月~)
  • インボイス制度の導入(2023年10月~)

があります。

電子帳簿保存法の改正内容の実施は数ヶ月後に迫っているとはいえ、実際に問題が生じるのは対象となる年の税務調査があったときでしょうから、早くても2~3年先のことになります。

インボイス制度にいたっては、導入まで1年以上あり、その対象年の税務調査となるとそこからさらに数年先のこととなります。

税理士という仕事をしていますので、こうした制度の詳細や対応しなかったときに起きうるリスクについて順次お伝えしていますが、数年も先のリスクについて今から危機感を持ってもらうのは容易なことではありません。

こうした状況について「危機感を持たないのが悪い」というつもりは一切なく、もし私が逆の立場でいきなり

「3~4年後に大変なことになるんで、今すぐ対応してください」

と言われたとしても、

「他にやらないといけないことたくさんあるし、まだ時間あるから後回しでいいんじゃないの」

と考えて、恐らく何も行動しないんじゃないかと。

そこで今回は、こうしたケースで危機感を持ってもらうための「伝え方」について考えてみたいと思います。

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将来起こりうるリスクに対して、今行動してもらうための伝え方

制度変更などについてお伝えする最終的な目的は、「今、行動を起こす必要がある」と理解してもらい、そして実際に行動してもらうことです。

お伝えする内容が「遠い未来に起こるかもしれないこと」と思われてしまっては目的を果たすことができませんので、「今対応する必要がある」と感じていただくことが重要です。

そのためにも、お伝えする際に以下の3点に注意するようにしています。

【1】できるだけわかりやすく伝える

何といっても大事なのは、まず内容を理解してもらうこと。

制度の詳細よりも大枠を理解してもらうことが大事ですから、場合によっては枝葉末節の部分は大胆にカットすることも必要です。

わかりにくい説明をして、「さっぱりわからん、どうでもいい。」と思われてしまっては、行動を起こしてもらうことなど一切期待できません。

わかりやすくするための工夫としては、

  • 説明するための資料を見やすいものにする(文字ばかりにならないよう注意する)
  • その方に合った具体的な事例を提示する
  • 対応しなかった場合に被るかもしれない「損」について明示する

といったことが挙げられます。

説明を受けた方の業務の中で具体的にどのようなことが起こり、放置するとどのような「損」が生じるかイメージしていただくことが大事です。

なお、人は自分が被る「損」を嫌がるものですが、あまりにも強調しすぎると単なる「煽り」になってしまいますので、バランスにも配慮が必要です。

【2】繰り返し伝える

新しい制度については、専門家であっても1回で理解できるものではありません。

専門家以外の方であれば、1回の説明で理解できないのは当然です。

そのためにも注意しておきたいのは、

「1回説明したから、もうわかったでしょ」

というスタンスを絶対に取らないこと。

折に触れて何回も説明を受けると、

「そういえば、以前もこんな話聞いたな」

「これだけ何度も説明するんだから、何か対応しないとまずいんだろうな」

といった感覚を持っていただけるものです。

丁寧に繰り返し説明すること。これも行動してもらうために重要なポイントの一つです。

ただし、あまりにしつこいと逆効果。

「その話、聞き飽きた」と思われるほど繰り返してしまうと、逆に嫌気がさして聞く耳を持ってもらえなくなる可能性がありますので、やはりバランスは重要です。

【3】今やるべき「小さな行動」を提示する

最後にもう一つ大事なこととして、対応が必要な行動をできるだけ小さなステップに分解して提示すること、を挙げておきます。

特に最初のステップはできるだけカンタンなものにすべきです。

例えば電子帳簿保存法について説明した後に、いきなり

「対応するために、ウン百万円する文書管理システムを導入してもらわないといけないんです」

なんて説明をしたら、中小企業の経営者の方はまず動いてくれません。

その会社に合った現実的な対応法を検討した上で、さらにその第一歩はできるだけカンタンなものにする。

説明を聞いた上で、「これくらいだったら、問題なくできる」と感じていただくことが、今すぐに行動を起こしてもらうためには欠かせません。

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「転ばぬ先の杖」に勝るリスク管理はない

将来起こりうるリスクに対して、なぜ今行動を起こしてもらう必要があるのか?

それは、「先手を打って事前に対応しておくことが、最もリスクを減らすことができる」からに他なりません。

何か問題が起きてから対応しようとしても、過去の行動を変えることはできません。

その一方で現在や将来の行動は変えることができます。

「転ばぬ先の杖」という諺がありますが、転ぶ前に杖を準備することが最高のリスク管理です。

相手に行動を起こしてもらいたい場合には、今の伝え方で十分かどうか一度見直してみてはいかがでしょうか。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。

さらに、商工会議所での講師やWeb媒体を中心とした執筆活動など、税理士業務以外でも幅広く活動を行っている。
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