「フィンテック」という言葉、皆さんもネットや新聞・ニュースなどで耳にされる機会が増えたのではないでしょうか。今回はフィンテックについての雑感を少し。

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1.フィンテックってどこが目新しい?

私が「フィンテック」についての解説を読んだときの最初の感想は「何が新しいの?」というものでした。

「金融(Finance)とIT技術(Technology)が融合して生まれるのがFintechです!」という説明の後に出てくるのが・・・

銀行等のオンラインバンキング情報を活用して家計簿管理や個人資産管理が便利になります!

という説明が多かったからです。

もちろん解説記事等では読む方にわかりやすくするため、身近なものから説明するためだと思いますが、家計簿管理(少し資産管理寄りですが)であればマイクロソフト社のMoney(2009年販売終了)というソフトで以前から銀行明細データを取込むことができました。

また、個人資産管理であれば野村證券が関連会社と組んで「資産一覧簿」というサービス(ID・パスワードを入力しておけば所有資産を一画面にまとめて表示するもの)をかなり昔に提供していた記憶があります。

そのため、当初はどうしても「なぜ今頃こんなものが流行するの?」という印象が拭えませんでした。

2.フィンテックは家計簿管理の技術革新ではない

ただ色々調べてみると、当然のことながら家計簿管理や資産管理だけの話ではないことがわかってきました。

技術的なことは詳しくはわかりませんが、ブロックチェーンといわれる技術を使った決済・送金のサービスの導入が期待されています。個人的には振込・送金手数料は高いと思っていますので、こうした分野での新しいサービスによる手数料の引き下げに期待したいところです。

また、AIを活用してコンピュータが資産運用のアドバイスをしてくれるというロボ・アドバイザーというサービスも一部の金融機関からすでに提供されています。感情やしがらみに流されない分、うまく使えば人からのアドバイスよりも効果的な場面もあるかもしれません。

資産管理についても、昔はIDとパスワードだけでしたが、今ではワンタイムパスワードが普及してきましたから、もし仮に資産管理サービス会社に預けたID・パスワードが流出したとしても、すぐに被害に遭うという危険性は昔と比べて減っています(もちろんサービス提供会社には情報漏えいが起こらないようセキュリティ対策を厳重に行ってもらわないといけませんが)。

似たようなサービスは昔も提供できたのかもしれませんが、安心にかつリーズナブルなコストで提供する技術と環境が整ったため「フィンテック」が今の時期に大きく取り上げられるようになったのだろうと考えています。

3.会計の世界のフィンテック対応はおまけ?

会計分野でのフィンテック=クラウド会計

翻って、会計の世界における「フィンテック」ですが、これはいわゆる「クラウド会計」が該当します。

ただ「フィンテック」という流れにおける中心的な技術がブロックチェーンやAIとするならば、「クラウド会計」には科目推測の部分でAIの技術が使われているとしても、全体の流れからすると会計分野での革新は傍流という印象を私は受けます。
(会計自体が一般の方にとって傍流だからかもしれませんが・・・)

クラウド会計の説明を聞いたときも最初は「銀行のデータ取込んで仕訳にするだけでしょ。CSVデータの取り込みなら昔からあるんだから何が新しいの?」という意見でした。

しかしながら、クラウド会計を使えばCSVデータを準備する手間が省けますし、定型仕訳であれば何もせずに仕訳が作れるといったことを考慮すれば、やはり業務効率化に貢献してくれる便利なサービスです。

新しいサービスが普及するには?

どんなに優れたサービスでも登場するタイミングを間違えると普及しません。

今はクラウド会計を推進した方が全体としての効率は上がると考えていますが、これもお客様に受け入れてもらえなければ結局は普及させることはできません。

この受け入れてもらうというのは、オンラインバンキングの安全性やID・パスワードを預けることに対しての安心感も含めてということになりますので、こうした点では税理士としてお客様に納得いただけるよう内容をきちんと理解して説明する必要があると考えています。

一方で、社会人になってから当たり前のようにパソコンやインターネットを使ってきた世代が増えてきていますので、クラウド会計などのサービスが普及するための環境は整いつつあると感じています。

そうした流れをうまくつかみながら、生活や仕事を便利にするための一つの手段として「フィンテック」を上手に活用していきたいものです。

投稿者

加藤 博己
加藤 博己加藤博己税理士事務所 所長
大学卒業後、大手上場企業に入社し約19年間経理業務および経営管理業務を幅広く担当。
31歳のとき英国子会社に出向。その後チェコ・日本国内での勤務を経て、38歳のときスロバキア子会社に取締役として出向。30代のうち、7年間を欧州で勤務。

40歳のときに会社を退職。その後3年で税理士資格を取得。

中小企業の経営者と数多く接する中で、業務効率化の支援だけではなく、経営者を総合的にサポートするコンサルティング能力の必要性を痛感し、「コンサル型税理士」(経営支援責任者)のスキルを習得。

現在はこのスキルを活かして、売上アップ支援から個人的な悩みの相談まで、幅広く経営者のお困りごとの解決に尽力中。